減算はいくらか(介護の早見表)
令和6年度の介護報酬改定で新しく設けられた減算です。厚生労働省の改定事項の資料では、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合に基本報酬を減算する、と説明されています。率は2段です。
| 区分 | 減算 | 告示で率を確かめたサービス |
|---|---|---|
| 施設・居住系サービス | 所定単位数の100分の3 | 介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 |
| その他のサービス | 所定単位数の100分の1 | 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、福祉用具貸与、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護など |
| 減算の対象外 | 適用されない | 居宅療養管理指導、特定福祉用具販売 |
見落としやすいのは短期入所です。特別養護老人ホームに併設していても、短期入所生活介護の報酬にかかる率は100分の1で、本体の入所の報酬にかかる100分の3とは別に決まっています。同じ建物の中でも、サービスごとに率が違うということです。
その他のサービスの1パーセントがどのくらいの重さかについて、厚生労働省の資料は、所定単位数から平均して7単位程度(1日または1回あたり)の減算になる、と注記しています。率を定額ではなく定率にした理由は、サービスごとに基本サービス費や算定の方式が違うため、と書かれています。
障害福祉では、どのサービスが3パーセントか
障害福祉サービスにも、令和6年度の報酬改定で同じ名前の減算が設けられています。率の分け方も同じ2段です。
| 減算 | 対象サービス(令和6年度報酬改定の概要による) |
|---|---|
| 所定単位数の3パーセント | 療養介護、施設入所支援(障害者支援施設が行う各サービスを含む)、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設 |
| 所定単位数の1パーセント | 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所、生活介護、自立生活援助、自立訓練(宿泊型自立訓練を除く)、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、就労選択支援、計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援、障害児相談支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援(障害者支援施設が行う各サービスを除く) |
障害者支援施設は注意が要ります。生活介護は単独の事業所なら1パーセントの側ですが、概要の書き方では、障害者支援施設が行う各サービスは3パーセントの側に入っています。施設入所支援と日中のサービスを一体で運営している法人は、自法人の報酬の区分を告示で確かめてください。
就労選択支援には、令和9年3月31日までの間は減算を適用しない経過措置が置かれています。新しく始まったサービスのための猶予で、計画を作らなくてよいという意味ではありません。
理事会で説明する1枚、職員向けの生成AI利用ルール、導入前チェックリストの3点を、公式LINEでお渡ししています。
資料セットを受け取るどんな状態だと減算になるのか
改定事項の資料は、次の2つの基準に適合していない場合を減算の対象としています。
- 感染症や非常災害の発生時に、サービスの提供を継続的に実施し、非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定すること
- その業務継続計画に従い、必要な措置を講ずること
ここから、決裁する立場で押さえておきたい点が3つあります。
1つめは、計画は感染症と災害の2本がそろって初めて策定済みになることです。資料もQ&Aも、いずれか又は両方が未策定の場合、と書いています。感染症の計画だけ作ってあり、災害の計画が手つかずという事業所は、未策定の側です。片方があるから率が半分になる、という扱いは確認した資料にはありません。
2つめは、Q&Aの文言が途中で直されていることです。令和6年3月のQ&A(Vol.1)の問164は、計画が未策定の場合、かつ、必要な措置が講じられていない場合に対象となる、と書いていました。同年5月のQ&A(Vol.6)の問7はこれを修正し、計画が未策定の場合や、必要な措置が講じられていない場合に対象となる、としています。計画の紙があれば足りる、と3月の文言のまま理解している場合は、読み直してください。必要な措置が具体的に何を指すかは、今回確認した資料には列挙されていません。判断に迷う点は指定権者に確かめるのが確実です。
3つめは、研修と訓練の扱いです。同じQ&Aは、業務継続計画の周知、研修、訓練、定期的な見直しの実施の有無は、この減算の算定要件ではない、としています。訓練を1回飛ばしたことで、直ちにこの減算になるわけではありません。ただしこれらは、令和3年度の改定で計画の策定と同じく義務付けられた取組です。障害福祉のQ&Aは、算定要件ではないが、趣旨を鑑み適切に実施していただきたい、と添えています。減算にならないことと、基準を満たしていることは別です。
| 法人の状態 | この減算の扱い(確認した資料の範囲) |
|---|---|
| 感染症と災害の計画が両方ある | 未策定には当たらない。計画に従った必要な措置を講じているかは別に問われる |
| どちらか片方しか無い | 減算の対象 |
| 両方とも無い | 減算の対象 |
| 計画はあるが、研修や訓練の記録が無い | 研修、訓練等の実施の有無は算定要件ではない。運営基準上の義務は残る |
いつからいつまで引かれるのか
金額を左右するのは、率よりもこの章です。
留意事項通知は、基準を満たさない事実が生じた場合に、その翌月(事実が生じた日が月の初日である場合は当該月)から、基準に満たない状況が解消されるに至った月まで、事業所の利用者全員について所定単位数から減算する、としています。対象は一部の利用者ではなく全員です。
そしてQ&Aは、行政機関が運営指導等で不適切な取扱いを発見した時点ではなく、基準を満たさない事実が生じた時点までさかのぼって減算を適用する、と明記しています。挙げられている例は次の2つです。
- 通所介護の事業所で、令和7年10月の運営指導等で未策定が分かった場合(感染症の指針と非常災害の具体的計画も作っていない場合)は、令和7年10月からではなく、令和6年4月から減算の対象となる
- 訪問介護の事業所で、令和7年10月の運営指導等で未策定が分かった場合は、令和7年4月から減算の対象となる
始まりの時期がサービスで違うのは、施行の時期と経過措置が分かれていたためです。介護のQ&Aの表を整理します。
| サービス | 施行時期 | 経過措置 |
|---|---|---|
| 通所介護、短期入所、特定施設、グループホーム、小規模多機能、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院など | 令和6年4月 | 令和7年3月31日までは、感染症の予防及びまん延の防止のための指針と、非常災害に関する具体的計画を作っていれば適用しない |
| 通所リハビリテーション | 令和6年6月 | 同上 |
| 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、福祉用具貸与、定期巡回、夜間対応型訪問介護、居宅介護支援、介護予防支援など | 令和7年4月 | 令和7年3月31日までは適用しない |
資料に書かれた経過措置の期限は令和7年3月31日で、すでに過ぎています。いま計画が無い事業所は、どのサービスであっても、少なくとも令和7年4月からの分が対象になりうるということです。令和7年4月から2026年10月までを数えると19か月になります。運営指導の通知が来てから作っても、過ぎた月の分は消えません。
障害福祉も考え方は同じです。障害福祉のQ&Aは、生活介護の事業所で令和6年10月の運営指導等で未策定が分かった場合は令和6年4月分の報酬から、居宅介護など令和7年4月から対象となるサービスは令和7年4月分の報酬から減算の対象となる、という例を挙げています。
自法人の金額は、どう見積もればいいか
式は単純で、対象サービスの基本報酬に率を掛け、月数を掛けます。厚生労働省の資料はこの減算を基本報酬の減算と説明しているので、まず請求の実績から、サービスごとの基本報酬の月額を出してください。
計算の形を示すために、仮の数字を置きます。実在の法人の数字ではありません。
| 仮の例 | 基本報酬の月額(仮) | 率 | 1か月の減算 | 12か月さかのぼった場合 |
|---|---|---|---|---|
| 入所施設 | 1,000万円 | 100分の3 | 30万円 | 360万円 |
| 通所の事業所 | 300万円 | 100分の1 | 3万円 | 36万円 |
表のとおり、1か月だけを見れば小さく見える額でも、月数が掛かると理事会に報告が要る額になります。3パーセントの側の施設は、12か月で基本報酬のおよそ3分の1か月分に当たります。
加算との関係など、請求上の細かい計算は、この記事では扱いません。告示の注の並び順と請求ソフトの設定で決まる部分なので、正確な額は事務の担当と請求ソフトの会社、指定権者に確かめてください。過去の分をどう精算するかの手続きも、指定権者の指示に従うことになります。
施設長と理事長は、何を確かめればいいか
現場に作ったかと聞くだけでは足りません。次の5点を、事業所ごとに一覧にして報告させてください。
- 感染症の業務継続計画と、災害の業務継続計画が、それぞれ別に存在するか。文書の名前と保管場所まで書かせる。
- それぞれの策定日はいつか。いつから計画があったかを示せるようにしておく。
- 法人で1本作った計画を、全事業所で使い回していないか。事業所の名前、所在地、連絡先、利用者の状況が、その事業所のものになっているか。
- 新しく指定を受けた事業所、譲り受けた事業所、休止から再開した事業所が、一覧から漏れていないか。
- 周知、研修、訓練、見直しの記録が、年度ごとに残っているか。この減算の要件ではないが、運営指導で基準として見られる。
1点めで計画が無い事業所が見つかったら、作ることと、いつから無かったのかを事実として整理することを、分けて進めます。日付を後から書き足して、あったことにするのはやめてください。減算より重い問題になります。
計画づくりや見直しに生成AIを使う場合の考え方も書いておきます。ひな形の文章を整える、厚生労働省のガイドラインの項目と自法人の計画を突き合わせて抜けを探す、訓練の記録の様式を作る、といった下ごしらえには向いています。一方で、連絡網、備蓄の数、避難先、優先して続ける業務は、その事業所の人が決めて書く部分です。AIが整えた文章があることと、計画を策定したと言えることは同じではありません。利用者や職員の個人情報を入力しない線引きは、ChatGPTに入れてはいけない情報にまとめています。
運営指導の前に書類全体をどう整えるかは運営指導で見られる書類の全体像と、事前に整える順番に書いています。次の改定の動きは、介護が令和9年度介護報酬改定とLIFE、障害福祉が令和9年度 障害福祉の報酬改定はいつ何が決まるかをご覧ください。この記事の率と条件は令和6年度改定の資料によるもので、令和9年度の改定での扱いは確認していません。
よくある質問
- BCP未策定減算は、いくら引かれますか。
- 施設・居住系サービスは所定単位数の100分の3、その他のサービスは100分の1に相当する単位数です。厚生労働省の資料は、この減算を基本報酬の減算と説明しています。介護では特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院、特定施設、グループホームなどが3パーセント、訪問、通所、短期入所などが1パーセントです。
- 感染症の計画はあり、災害の計画だけ無い場合も減算されますか。
- 対象になります。厚生労働省の資料とQ&Aは、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合を減算の対象としています。片方だけなら率が半分になるという扱いは、確認した資料にはありません。
- 研修や訓練をしていないと、この減算になりますか。
- 厚生労働省のQ&Aは、業務継続計画の周知、研修、訓練、定期的な見直しの実施の有無は、業務継続計画未策定減算の算定要件ではないとしています。ただしこれらは運営基準で義務付けられている取組です。減算にならなくても、運営指導で基準に合っていないと指摘される対象にはなります。
- 運営指導で見つかった場合、いつの分から減算されますか。
- 見つかった月からではありません。厚生労働省のQ&Aは、基準を満たさない事実が生じた時点までさかのぼって減算を適用するとしています。留意事項通知では、事実が生じた月の翌月から、基準に満たない状況が解消された月までが減算の期間です。
- 計画を作れば、その月から減算は止まりますか。
- 留意事項通知では、減算は基準に満たない状況が解消されるに至った月まで続くとされています。作った月の分までは減算の対象で、止まるのは翌月の分からと読めます。届出の要否や様式は指定権者ごとに扱いがあるので、所管の自治体に確かめてください。
まとめ|率はサービスで決まり、額は月数で決まる
業務継続計画未策定減算は、施設・居住系が所定単位数の100分の3、その他が100分の1です。分かれ目はサービスの種類で、同じ建物の中でも入所と短期入所で率が違います。感染症と災害のどちらか片方の計画が無いだけでも対象になります。
額を大きくするのは月数です。減算は事実が生じた時点までさかのぼり、解消した月まで、利用者全員の分にかかります。経過措置の期限は過ぎているので、確かめるなら今月です。事業所ごとに、2本の計画の有無と策定日を一覧にするところから始めてください。
出典
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html(告示、通知、Q&Aの一覧)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230329.pdf(1.(5)④ 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入。率、算定要件、経過措置、平均7単位程度の注記、対象外のサービス)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和6年厚生労働省告示第86号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227814.pdf(サービスごとの減算の率)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227887.pdf(減算の始まりと終わり、利用者全員への適用)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227894.pdf(短期入所と施設サービスでの同じ扱い)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230308.pdf(問164から問166。適用の条件、施行時期の表、さかのぼりの例)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.6)(令和6年5月17日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001255640.pdf(問7。Vol.1の問164の修正)
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(令和6年2月6日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001205322.pdf(障害福祉の率と対象サービス、経過措置、就労選択支援の扱い)
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1(令和6年3月29日)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001260473.pdf(問14、問15。適用の条件とさかのぼりの例)
この記事は2026年10月7日時点で公開されている情報に基づいています。確認したのは令和6年度の介護報酬改定と障害福祉サービス等報酬改定の資料です。その後の通知やQ&Aの追加、令和9年度の改定での扱い、指定権者ごとの運用は確認していません。金額の表は計算の形を示すための仮の数字です。実際の減算の額、過去の分の精算、届出の手続きは、所管の指定権者と最新の告示、通知でご確認ください。
理事会に持っていける資料セットをお渡しします
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最終更新:2026-10-07
