結論:落ちるのは金額ではなく、比較と撤退条件と責任者が無いから
先に結論を書きます。理事会でAI導入の稟議が持ち帰りになるとき、理事が口に出す言葉は「もう少し検討を」ですが、頭の中で引っかかっているのはほぼ次の3つです。
| 理事が引っかかる点 | 実際に聞かれる言葉 | 起案書に書いておくべきこと |
|---|---|---|
| 他と比べたのか | 他社製品も見たのか、人を増やす案と比べたのか | 比較3案と、選ばなかった理由 |
| 外したときどうするのか | 効果が出なかったら誰が責任を取るのか | 撤退条件(いつ・何を基準に・誰が判断するか) |
| 誰が回すのか | 結局また現場の負担が増えるのではないか | 担当者名と、その人の時間をどう空けるか |
この3つが書かれていれば、金額が大きくても議論は前に進みます。逆に、この3つが無いまま「業務が楽になります」とだけ書かれた起案は、たとえ月1万円でも持ち帰りになります。理事は現場を見ていないので、楽になるという言葉を検証する手立てがありません。検証できないものは承認できない、というだけの話です。
落ちる起案書の3パターン
実際に見かける典型を3つ挙げます。どれも真面目に書かれているのに通らない書き方です。
- 効果が形容詞で終わっている:負担が軽くなる、職員が助かる、業務効率が上がる。どれも本当のことですが、読み手には大きさが分かりません。ここは「1日あたり何分」に置き換えるだけで通り方が変わります。分が出せないなら、まず測ってから出したほうが早いです。
- 選択肢が1つしかない:導入したい製品の資料だけを添えた起案は、比較検討の跡が見えないため、理事から見ると業者に言われたまま持ってきたように映ります。実際にそうでなくても、そう見えることが問題です。
- 導入後の話が無い:買うところまでしか書かれておらず、誰が設定し、誰が職員に教え、いつまでに全員が使える状態にするのかが空白。理事会で最も突かれるのはここです。機器は買えば届きますが、運用は誰かが作らないと生まれません。
3つに共通しているのは、書き手が現場を知りすぎていることです。現場では自明な前提が、理事には見えていません。起案書は現場報告ではなく、前提を共有していない相手への説明資料だと考えると、抜けが埋まります。
自法人の起案書が3パターンのどれに当てはまるか、下書きの段階で見ます。無料です。
公式LINEで相談する通る起案書の6項目
順番も含めて、この形が最も質疑が短くなります。A4で1枚から2枚に収めてください。長い起案書は読まれません。
| 項目 | 書く中身 | 分量の目安 |
|---|---|---|
| 1. 現状(数字) | どの業務に、誰が、1日あたり何分使っているか。実測値と測った期間 | 3行 |
| 2. 打ち手と比較 | 案A(導入する案)、案B(人を増やす案)、案C(何もしない案)の3つを並べ、費用と効果を同じ物差しで比較 | 表1つ |
| 3. 費用と回収 | 初期費用、月額、補助金を差し引いた実負担、何か月で人件費換算に見合うか | 表1つ |
| 4. リスクと撤退条件 | 想定される失敗と、いつ何を基準に撤退するか。判断する人の役職 | 3行 |
| 5. 体制と期限 | 担当者名、その人の時間の空け方、全職員が使える状態になる期日 | 3行 |
| 6. 段階導入の計画 | 1ユニットで試す期間、全体展開の判断日 | 3行 |
とくに効くのが4番の撤退条件です。撤退条件を先に書くと、理事にとってこの案件は「不可逆な投資」から「期限つきの試行」に変わります。人は取り消せない決断を嫌いますが、やめ方が決まっている決断には乗りやすい。心理の問題であると同時に、責任の所在の問題でもあります。
2番の比較で案Cとして「何もしない案」を必ず入れてください。何もしない場合のコスト(残業代、採用費、離職による欠員の穴埋め)を並べると、導入費用が単独で大きく見えなくなります。比較の土俵を作るのは起案する側の仕事です。
そのまま書き写せる文例(1枚版)
数字と固有名詞だけ入れ替えれば使えます。長くしないのがコツです。
件名:介護記録の音声入力導入について(1ユニット試行)
1. 現状:8月4日から8月10日の1週間、日勤帯の職員3名で実測。介護記録の入力に1人1日あたり平均48分、申し送りの準備に14分を要している。3名で1日186分、1か月で約93時間。
2. 比較:案A 音声入力ソフトの導入。案B 記録専任の非常勤を週3日採用。案C 現状維持。案Bは年間約◯◯万円かかり、採用できる保証がない。案Cは時間外勤務が続き、9月の離職1名の補充も見込めない。よって案Aを提案する。
3. 費用と回収:初期◯◯万円、月額◯◯円。県の補助金(補助率5分の4)が使えた場合の実負担は◯◯万円。記録時間が3割減れば1か月あたり約28時間の削減となり、時間単価1,500円換算で月4.2万円。実負担は◯か月で回収できる。
4. リスクと撤退条件:音声認識の精度が現場の言い回しに合わない可能性がある。試行開始から3か月後の◯月◯日時点で、記録時間の削減が1割未満であれば、施設長の判断で契約を更新しない。
5. 体制と期限:担当は主任◯◯。導入期間中の委員会業務を副主任へ一時移管し、週2時間を確保する。◯月◯日までに1ユニット全員が使える状態にする。
6. 段階導入:まず2階ユニット(職員9名)で3か月試行。◯月の運営会議で全体展開の可否を判断する。
この6項目を埋めると、A4で1枚に収まります。添付するのは製品資料ではなく、実測の記録用紙のコピー1枚で十分です。理事が知りたいのは製品の性能ではなく、この法人でどれだけ時間が減るのかだからです。
補助金を絡めるときの3つの落とし穴
都道府県の介護テクノロジー導入支援の補助を使う前提で稟議を出す場合、理事会の日程そのものが締切から逆算されます。とくに次の3点で計画が崩れます。
- 交付決定より前の契約は対象外になる:多くの県が、交付決定後に契約や発注をすることを条件にしています。理事会の承認を得て先に発注してしまうと、補助金が受けられなくなります。承認は取る、発注は待つ、という順番を起案書に明記してください。
- 申請の前に済ませておく宿題がある:セミナーや研修の受講、県の相談センターへの事前相談、情報セキュリティの宣言、業務改善計画の提出などを申請要件にしている県が少なくありません。これらは数日で終わらないものもあります。
- 年度内に実績報告まで終わらせる必要がある:導入して終わりではなく、期限までに実績報告を出すところまでが補助の範囲です。導入が遅れると報告が間に合いません。
県ごとの名称、補助率、上限額、締切、必須要件は全国の福祉DX・補助金ガイド(都道府県一覧)に47都道府県ぶんをまとめてあります。稟議の日程を決める前に、自県の締切を先に確認してください。締切が過ぎている県でも、次の募集に向けて仕込む期間として使えます。
自県の締切から逆算した、理事会と申請のスケジュールを一緒に引きます。
公式LINEで相談する効果の数字は、1週間の実測で足りる
数字を出すのが難しいという相談をよく受けますが、全業務を測る必要はありません。測るのは記録、申し送り、家族や関係機関への連絡の3つで十分です。日勤帯の職員3名に、その作業を始めた時刻と終えた時刻をメモしてもらうだけ。1週間で平均が出ます。
厚生労働省も、生産性向上の進め方の最初の工程に業務時間の見える化を置いています。手引きとガイドラインは公開されており、稟議書の根拠として出典を添えられます(介護分野における生産性向上ポータルサイト、介護分野における生産性向上について、生産性向上の取組を支援・促進する手引き。いずれも2026-08-24に確認)。国の資料を引いていること自体が、理事会では効きます。思いつきではないと伝わるからです。
機器を検討する段階では、テクノエイド協会のTAISで製品情報を確認できます。県の補助金の対象機器がTAIS登録品に限られていることも多いので、比較表を作る前に見ておくと手戻りがありません。情報セキュリティの宣言を要件にする県もあり、その場合はIPAのSECURITY ACTIONが入口になります。
測り方と、記録業務そのものの減らし方は介護記録をAIで効率化する具体手順にまとめています。費用対効果の判断だけを先に知りたい場合は介護記録AIの費用対効果を、施設長が3分で判断する方法が対になる記事です。導入して失敗する型を先に知っておきたい方は福祉施設のAI導入で失敗する典型もあわせてどうぞ。
費用の目安(自社の料金も開示します)
製品の価格はベンダー見積によりますが、当社の伴走支援の料金は先に開示します。起案書づくりの段階から入る場合の費用感としてお使いください。
| メニュー | 内容 | 料金 |
|---|---|---|
| LINE公式アカウント構築・運用代行 | ライト/スタンダード/運用代行 | 初期 0〜10万円 月 9,800〜39,800円 |
| AI伴走(現場版・顧問) | 月2回〜の伴走。業務棚卸しから定着まで | 月 10万円〜 |
| 1Dayワークショップ | 御社の業務で実演+専用プラン納品 | ¥49,800(顧問の初月に全額充当) |
初回相談は無料です。起案書の下書きを見るところからでも構いません。オンライン中心のため全国どこでも同条件です。
よくある質問
- 効果を数字で書けと言われても、現場の時間を測っていません。どうすればいいですか。
- 全部を測る必要はありません。記録、申し送り、家族連絡の3つに絞って、1週間だけ実測してください。職員に手帳を渡すのではなく、日勤帯の職員3名に「その作業を始めた時刻と終えた時刻」をメモしてもらうだけで足ります。1週間ぶんの平均を出せば、稟議に書く数字としては十分な根拠になります。厚生労働省の生産性向上の手引きも、業務時間の見える化を最初の工程に置いています。
- 理事会で必ず聞かれる質問は何ですか。
- 経験上ほぼ固定で3つです。ひとつ、他の方法と比べたのか。ふたつ、効果が出なかったらどうするのか。みっつ、誰が責任を持って回すのか。起案書にこの3つの答えを先に書いておくと、質疑が短くなり、その場で決まりやすくなります。逆に、この3つが書かれていない起案は金額の大小に関係なく持ち帰りになります。
- 補助金が使えるなら、稟議も通りやすくなりますか。
- 通りやすくはなりますが、条件がつきます。多くの県で交付決定前に契約や発注をした分は補助対象外になり、申請前にセミナー受講や相談センターへの相談を求める県もあります。つまり補助金を前提にすると、理事会の日程そのものが締切から逆算されます。県ごとの締切と要件は都道府県別のガイドにまとめてあります。
- 起案書の作成から手伝ってもらえますか。
- はい。業務時間の測り方の設計、比較案の作成、費用と回収の試算、撤退条件の文面まで一緒に作ります。合同会社サンは埼玉県所沢市が本社で、伴走はオンライン中心のため全国どこでも同条件です。初回の相談は無料です。
次の理事会に、通る形の1枚を持っていきませんか
現状の測り方から比較案、撤退条件の文面まで、御法人の状況に合わせて一緒に作ります。まずは今ある下書きを見せてください。無料で整理してお返しします。
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