記録の出口は3つ、そして戻り道が1つ
事業所の記録が外に出ていく先は、いま大きく3つあります。
1つめは、ほかの事業所です。居宅介護支援事業所とサービス事業所の間でやりとりするケアプランや実績が、これにあたります。2つめは、国のデータベースです。LIFEに様式の情報を送る流れがこれです。3つめは、市町村と医療機関につながる仕組みです。介護情報基盤と、その入口になる介護保険資格確認等WEBサービス、略して介護WEBサービスがこれにあたります。
そして4つめとして、出口ではなく戻り道があります。介護ソフトを別の会社に替えるとき、これまでの記録を自分たちの手元に取り戻せるかどうかです。ふだん誰も試していないのに、いちばん困るのがこの道です。
この4つは、担当部署も案内の届き方もばらばらです。ケアプラン連携はケアマネジャーに、LIFEは加算の担当者に、介護情報基盤は請求の担当者に届きます。届いた人がそれぞれ別々にベンダーへ問い合わせるので、法人として何がどこまでできるのかが誰にも見えません。まとめて一度に確かめるほうが早い、というのがこの記事の趣旨です。
ご利用中の介護ソフトの製品名をうかがえば、4つの出口のうちどこから手を付けるかを整理してお返しします。無料です。
公式LINEで相談する今日30分でやること|出力の操作を実際にしてみる
先に結論を書くと、ベンダーに電話をする前に、自分たちで出力の操作をしてみるのがいちばん早いです。「対応しています」という答えと、画面に出力のメニューがあって実際にファイルが作られることの間には、かなりの距離があります。製品としては対応していても、その機能を契約していない、あるいは職員のアカウントに権限が無いというのは珍しくありません。
やることは3つです。
- 利用者を1人選び、ケアプランの情報を外部に出す操作を探して、実行してみる
- LIFEに送る様式のうち1つを選び、CSVを作る操作を探して、実行してみる
- 作られたファイルを開いて、中身が空でないこと、文字が崩れていないことを見る
ここで大事なのは、うまくいかなかったときに何が起きたかを書き留めておくことです。メニューが見つからなかったのか、権限が無いと言われたのか、ファイルはできたが開くと文字が崩れていたのか。この3つは原因が別で、ベンダーに聞くべきことも変わります。区別せずに「できませんでした」と伝えると、返ってくる答えも一般論になります。
操作する人は、ふだん記録を入力している職員がよいです。管理者のアカウントでできても、現場のアカウントでできなければ、実際の運用では使えません。
標準の形が示されているのは、どこまでか
ここは誤解の多いところなので、確認できた範囲だけを書きます。
厚生労働省は、異なるベンダーの介護ソフト間でもデータ連携ができるように、「居宅介護支援事業所と訪問介護などのサービス提供事業所間における情報連携の標準仕様」を作成しています。これは令和6年7月4日の通知(老高発0704第1号、老認発0704第3号。介護保険最新情報Vol.1287)で改訂され、介護予防支援と介護予防ケアマネジメントが連携の対象に加えられるとともに、名称が「ケアプランデータ連携標準仕様」に変わりました。
この標準仕様の意味は、Q&Aにはっきり書かれています。標準仕様に対応した介護ソフトから出力されるCSVファイルは通知で示した形式に標準化されるため、異なるベンダーの介護ソフトを使っている事業所同士でも、ケアプランデータ連携システムを利用することなどにより円滑にデータ連携ができるようになる、という説明です。裏を返すと、標準の形が効くのは、通知で形式が決められた範囲に限られるということでもあります。
ケアプラン以外にも標準仕様はあります。同じ令和6年7月4日の通知のなかで、入退院時情報連携標準仕様と訪問看護計画等標準仕様については、引き続き令和4年8月12日の通知(老高発0812第1号ほか)の別添2と別添3を適用すると案内されています。入退院のやりとりが多い法人は、ケアプランだけを見て「うちは対応済み」と判断しないほうが安全です。
一方で、日々の介護記録や申し送り、支援経過の全体について、事業所が自由に持ち出せる形式を定めた通知は、今回の調査では確認できませんでした。ここは国の仕様の話ではなく、製品と契約の話になります。後ろの章で扱います。
LIFEのCSVは、文字コードまで決まっている
LIFEに情報を送る道は、介護ソフトが作ったCSVファイルをLIFEに取り込む形が基本です。仕様書には、介護業務ソフトを導入している事業所ではLIFEで収集する情報の一部がすでに電子化されて管理されており、これを取り込むことで負担を少なくしながら情報の収集ができる、という考え方が書かれています。
実務で効いてくるのは、細かい決めごとのほうです。CSV連携仕様書(LIFE)0310版では、文字コードはUTF-8またはShift-JIS(MS932)のいずれかとされ、UTF-8の場合はBOMの有無を問わないとされています。ファイル名については規則を設けず、職員が識別しやすい名前を付けるよう推奨する書き方になっています。
取り込みでつまずいたとき、現場では「LIFEが重い」「エラーが出た」と一括りにされがちですが、原因が文字コードなら、事業所の側でも切り分けられます。表計算ソフトで開いて名前が崩れて見えるファイルは、そのまま送っても通りません。
もう1つ、令和8年に起きた変化を押さえておいてください。LIFEは令和8年5月11日に運営主体が厚生労働省から公益社団法人国民健康保険中央会へ移り、国保中央会が運用するLIFEとしてサービスの提供が始まっています。この移管に合わせて、介護ソフトの会社が検証に使う環境も切り替わりました。厚生労働省が運用していた側のベンダー向け環境は、令和8年9月1日に終了する予定と案内されています。つまり、ご利用中のソフトがLIFEの新しい環境での確認を終えているかどうかは、この秋の時点で製品ごとに差が出る部分です。
LIFEの取り込みで止まっている様式があれば、エラーの文面をそのまま送ってください。仕様の話か運用の話かを切り分けてお返しします。
公式LINEで相談する介護情報基盤は、ソフトの話とアカウントの話が別々に来る
介護情報基盤については、事業所がやることが2つの系統に分かれています。ここを混ぜると話が進まなくなります。
1つはソフト側の話です。厚生労働省老健局の令和8年8月の説明会資料では、2027年1月にケアプランデータ連携システムが介護WEBサービスの中に構築されること、そして自治体が介護情報基盤の運用を開始すると、介護ソフト(API5.0版)からケアプランが介護情報基盤に格納されることが示されています。これはベンダーの改修を待つ部分で、事業所が急いでも早くなりません。
もう1つはアカウントと機器の話です。こちらは事業所の手で進みます。同じ資料では、2026年7月から12月までの間が引っ越しの準備期間とされ、介護WEBサービスの登録を早めに行うよう案内されています。登録には電子請求受付システムのID(KJから始まる12桁)とパスワード、登録したメールアドレスが必要とされています。導入の手順としては、電子証明書を使用する端末ごとにインストールすること、介護WEBサービスの閲覧に使う端末と通信機器を用意すること、利用者のマイナンバーカードを読み取るカードリーダーを用意すること、マイナ資格確認アプリを入れて設定することが挙げられています。
市町村ごとの状況も確かめられます。介護情報基盤を利用するには市町村がシステム改修を終えている必要があり、利用開始日は介護情報基盤ポータルの「市町村(保険者)の対応状況」から都道府県ごとに確認できると案内されています。一方で、ケアプランの機能は自治体の利用開始日より前から利用可能とされているため、市町村の対応を待つ理由にはなりません。
ケアプランデータ連携システムそのものの移行手順と期日については、ケアプラン連携は令和9年3月下旬に新仕様へで日付ごとに整理しています。この記事は、その前提として自分の記録が出せる形かどうかを見る回です。
乗り換えるときに、手元へ戻せるもの
4つめの道です。ここだけは国の仕様が助けてくれません。
介護ソフトを替える相談を受けると、ほとんどの法人が同じところでつまずきます。新しいソフトを選ぶところまでは進むのに、これまでの記録をどう引き継ぐかが決まらないまま契約日が近づいてくる。そして解約の話をした段階で、データの受け渡しには別途費用がかかると言われ、金額を聞いて止まります。
止まらないようにするには、順番を1つ変えるだけで足ります。新しいソフトを探し始める前に、いま使っているソフトから何をどの形で受け取れるのかを、先に書面で確かめておくことです。確かめる相手は、これから売り込んでくる会社ではなく、いま契約している会社です。
そのうえで、受け取ったファイルをどう扱うかも決めておいてください。過去の記録は、新しいソフトに全部入れ直さなくても構わない場合があります。保存が必要な期間だけPDFや表の形で残し、日々使うのは新しいソフトに切り替える、という整理でも運営指導には耐えます。全件の移行にこだわると費用が跳ね上がるので、必要な範囲を先に決めるほうが現実的です。
介護ソフトの会社に送る5つの質問
そのままメールに貼って使える形で置いておきます。電話ではなくメールで聞いてください。答えが文字で残ることに意味があります。
いつもお世話になっております。記録データの連携について、5点うかがえますでしょうか。
1. 貴社製品は、ケアプランデータ連携標準仕様に対応していますか。対応している版をお教えください。
2. 入退院時情報連携標準仕様と訪問看護計画等標準仕様への対応状況はいかがでしょうか。
3. LIFEのCSV連携仕様書0310版への対応と、国民健康保険中央会が運用するLIFEでの動作確認は完了していますか。
4. 令和9年1月に予定されている介護保険資格確認等WEBサービスへの移行について、貴社製品の改修時期と、当事業所側で必要な作業をお教えください。
5. 万一契約を終了する場合、当事業所の記録データはどの範囲を、どの形式で、いくらの費用で、どれくらいの期間でお渡しいただけますか。
お手数をおかけしますが、書面でご回答をお願いできますと助かります。
5番目を入れることに抵抗を感じる方がいます。乗り換えを疑っていると思われないか、という心配です。実際に送ってみると、真面目な会社ほど普通に答えてくれます。答えが濁る会社があったとしたら、それ自体が知っておくべき情報です。
返ってきた回答は、印刷して契約書と一緒に綴じてください。担当者が替わったときに、この1枚があるかどうかで話の早さが変わります。
お金|カードリーダーと設定の助成には限度額がある
介護情報基盤の利用に向けた準備には助成があります。令和8年4月28日の介護保険最新情報Vol.1497で示されている内容は次のとおりです。
助成の対象経費は、カードリーダーの購入経費と、介護情報基盤との接続サポート等経費です。限度額は介護サービスの種別で分かれています。
| 対象(介護サービス種別) | カードリーダーの助成限度台数 | 助成限度額 |
|---|---|---|
| 訪問・通所・短期滞在系 | 3台まで | 6.4万円まで |
| 居住・入所系 | 2台まで | 5.5万円まで |
| その他 | 1台まで | 4.2万円まで |
同一の事業所で複数のサービスを提供している場合は、種別に応じた限度額の合計を限度額とすることができるとされています。消費税分も助成の対象に含まれます。申請の受付期間は令和8年5月7日から令和9年3月12日まで(予定)で、令和8年4月1日以降に実施された事業が対象です。申請は国民健康保険中央会の介護情報基盤ポータル経由となっています。予算に限りがあるため早めの申請を検討してほしい、という案内も付いています。
金額としては大きくありませんが、性質が特殊です。カードリーダーを買う前に申請の流れを確かめておかないと、対象の条件を外すことがあります。設定作業を外部に頼んだ費用も対象に含まれるので、自分たちで抱え込まずに済む部分でもあります。補助金そのものの進め方は介護テクノロジー補助金は採択後に止まるに整理しています。
よくある質問
- 介護ソフトを使っていれば、記録は自動的に外に出せる形になっていますか。
- そうとは限りません。厚生労働省が標準の形を示しているのは、ケアプランデータ連携標準仕様、入退院時情報連携標準仕様、訪問看護計画等標準仕様、そしてLIFEのCSV連携仕様といった範囲です。これらに対応しているかどうかは製品ごとに異なります。まずはご利用中の介護ソフトで、実際に出力の操作をしてファイルが作られるかを確かめてください。画面にメニューが無い場合は、その機能を契約していないか、製品が対応していないかのどちらかです。
- LIFEに取り込むCSVの文字コードは決まっていますか。
- CSV連携仕様書(LIFE)0310版では、UTF-8またはShift-JIS(MS932)のいずれかとされています。UTF-8の場合はBOMの有無を問わないとされ、ファイル名についての規則は設けられていません。事業所の職員が識別しやすい名前を付けるよう推奨する記載になっています。取り込みがうまくいかないときは、まず文字コードが仕様の範囲に収まっているかを確認してください。
- 介護情報基盤を使うために、事業所は何を用意するのですか。
- 厚生労働省老健局の令和8年8月の説明会資料では、電子請求受付システムのIDとパスワードによる認証、使用する端末ごとの電子証明書のインストール、介護WEBサービスの閲覧に使う端末と通信機器、利用者のマイナンバーカードを読み取るカードリーダー、マイナ資格確認アプリの導入と設定が挙げられています。市町村ごとの介護情報基盤の利用開始日は介護情報基盤ポータルで確認でき、ケアプラン連携の機能は自治体の利用開始日前から利用可能とされています。
- 介護ソフトを別の会社に乗り換えるとき、これまでの記録は持ち出せますか。
- 国が標準の形を示しているのはケアプランやLIFEなど連携のための項目で、日々の介護記録や申し送りの全体について、事業所が自由に持ち出せる形式を定めた通知は確認できていません。持ち出せる範囲は製品と契約によって変わります。乗り換えを検討する前に、解約時にどのデータをどの形式で受け取れるのか、費用はいくらか、対応にかかる期間はどれくらいかを、書面でベンダーに確認してください。
- 連携に対応していないソフトを使っていると、加算に影響しますか。
- 加算の要件は制度ごとに定められているため、一律には言えません。ケアプランデータ連携システムへの加入が要件の判断に関わる場面もあるので、ご自身の事業所が算定している加算の要件を、所管の都道府県や市町村の手引きで確認してください。この記事では、要件の当てはめではなく、その前段にあるデータの形の点検を扱っています。
まとめ|今週やるのは、出力ボタンを押すことと、メールを1本出すこと
記録が外に出る道は4つ。ほかの事業所へ、LIFEへ、介護情報基盤へ、そして自分たちの手元へ戻す道です。制度の案内はばらばらに届きますが、事業所側の準備は一度にまとめられます。
今週やることを2つに絞るなら、こうなります。1つは、ふだん記録を入力している職員の画面で、出力の操作を実際にしてみること。もう1つは、この記事に置いた5つの質問を、いま契約している介護ソフトの会社にメールで送ることです。どちらも新しい費用はかかりません。
介護WEBサービスの登録がまだであれば、あわせて進めておいてください。2026年7月から12月が引っ越しの準備期間とされていて、いまはその真ん中にあたります。
出典
- 厚生労働省老健局「ケアプランデータ連携システムの統合と介護情報基盤(介護保険資格確認等WEBサービス)について」(令和8年8月) https://www.mhlw.go.jp/content/12306000/001742527.pdf(2027年1月の統合、2026年7月から12月の準備期間、API5.0版、電子証明書・端末・カードリーダー・マイナ資格確認アプリの準備、電子請求受付システムのID、市町村の利用開始日の確認方法)
- 厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1497」(令和8年4月28日)令和8年度における介護情報基盤の活用のための介護事業所等への支援について https://www.mhlw.go.jp/content/001696517.pdf(助成対象経費、助成限度台数と限度額、申請受付期間、申請先)
- 厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1287」(令和6年7月4日)「ケアプランデータ連携標準仕様」について https://www.mhlw.go.jp/content/001271860.pdf(標準仕様の改訂と名称変更、介護予防支援等の追加、入退院時情報連携標準仕様と訪問看護計画等標準仕様の取扱い)
- 厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1177」(令和5年10月6日)「ケアプランデータ連携標準仕様 Q&A(2023年10月版)」の送付について https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2023/231010_4.pdf(標準仕様に対応したソフトが出力するCSVの標準化。掲載は公益社団法人全日本病院協会)
- 厚生労働省老健局老人保健課 事務連絡(令和8年5月11日)「科学的介護情報システム(LIFE)と介護ソフト間におけるCSV連携の標準仕様について(その9)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/001698658.pdf(運営主体の移管、ベンダー向け環境の利用可能期間)
- 厚生労働省老健局・国民健康保険中央会「科学的介護情報システム(LIFE)CSV連携仕様について【3.10版】」(令和8年5月) https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/001698660.pdf(取り込みの考え方、文字コード、ファイル名の扱い)
- 公益社団法人国民健康保険中央会「介護保険資格確認等WEBサービスの利用にあたって」(令和8年7月版) https://www.kaigo-kiban-portal.jp/assets/pdf/kaigoweb_riyou.pdf(端末と電子証明書の準備、アカウントの種別)
- 介護情報基盤ポータル(公益社団法人国民健康保険中央会) https://www.kaigo-kiban-portal.jp/(市町村の対応状況、各種申請)
いずれも2026年9月18日に内容を確認しています。介護ソフトごとの対応状況は製品によって異なり、移行の期日や助成の取扱いは今後の案内で変わることがあります。実際の対応は、厚生労働省と国民健康保険中央会の最新の案内、ご利用中のベンダーの案内、所管の都道府県および市町村の手引きでご確認ください。
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