会計年度の12か月を4つの期に分け、期末ごとに理事会へ報告する
- 第1四半期(4月から6月)ルールを確定し、試す前を測る決算と重なるので支出は小さく
- 第2四半期(7月から9月)1つの業務で試し、続けるかを判断する
- 期末に測った数字を、理事長の報告に入れる
- 第3四半期(10月から12月)2つ目の業務に広げる来年度の見積もりを取る
- 第4四半期(1月から3月)1年をまとめ、来年度の予算の案を出す
12か月計画には、何を書けばいいのか
書くのは次の表1枚です。4月に始まる会計年度に合わせ、四半期ごとに4つの列を埋めます。
| 期 | この期にやること | 期末に見る成果指標 | 理事会に出すもの | 予算の動き |
|---|---|---|---|---|
| 第1四半期(4月から6月) | 利用ルールと責任者を確定する。試す業務を1つ決め、試す前の作業時間を測る | ルールを職員に配った日。試す前の作業時間の記録があるか | 年間計画と体制 | 当初予算の執行を始める。決算の時期と重なるので支出は小さく置く |
| 第2四半期(7月から9月) | 1つの業務で試し、同じ測り方で作業時間を測る | 試す前と後の作業時間。出力を直した回数。入れてはいけない情報についての報告の件数 | 試行の結果と、続ける、縮める、止めるの判断 | 広げる場合に増える費用を見積もる。予算と乖離が出るかを確かめる |
| 第3四半期(10月から12月) | 2つ目の業務に広げる。職員研修を行い、手順書を作る | 使っている職員の数。手順書がある業務の数。業務ごとの作業時間 | 広げた結果と、来年度の計画の骨子 | 来年度の予算に入れる費目の見積もりを取る |
| 第4四半期(1月から3月) | 1年の結果をまとめる。利用ルールを見直し、来年度の計画を作る | 年度の初めに測った作業時間との比較。ルールを見直した日 | 年間の報告と、来年度の事業計画と予算の案 | 来年度の予算を、定款の手続で年度が始まる前に決める |
表にサービス名の列はありません。どの道具を使うかは、利用ルールと試す業務が決まってから比べれば間に合うからです。ルールと責任者、決裁先の確かめ方、最初の1業務の選び方は社会福祉法人が生成AIを入れる順番に書いています。この記事は、その順番を1年の暦に置いたときの計画表だけを扱います。
理事会の資料にするときは、表の下に3行を足します。責任者の氏名、年間の費用の合計、止める基準です。この3行が無い計画は、質問が出たその場で答えられず、次の理事会に持ち越しになりやすいからです。
なぜ四半期で区切るのか
理事会に報告する機会が、もともと3か月ごとにあるからです。
社会福祉法第45条の16第3項は、理事長と業務執行理事が、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならないと定めています。ただし書きがあり、定款で、毎会計年度に4か月を超える間隔で2回以上報告すると定めた法人は、その回数で足ります。厚生労働省の指導監査ガイドラインは、この報告は実際に開催された理事会で行わなければならず、決議の省略による理事会では足りないとしています。
報告の回数は定款で変わるが、測る間隔は3か月のままにする
3か月に1回以上の法人
- 表の4つの期を、そのまま使う
- 期末に測った数字が、報告の材料になる
定款で、4か月を超える間隔で2回以上と定めた法人
- 4つの期を、前半と後半の2つにまとめる
- 数字を測るのは3か月ごとのままにする
AI導入の進み具合は、この報告の中の1項目として入れます。新しい会議を作る必要はありません。計画の区切りを報告の時期に合わせておけば、期末に測った数字がそのまま報告の材料になります。
御法人の定款が年2回の定めなら、表の4つの期を前半と後半の2つにまとめます。その場合も、数字を測るのは3か月ごとのままにしてください。半年に1回しか測らないと、試行がうまくいっていないことに気づくのが遅れます。
四半期ごとの成果指標には、何を置けばいいのか
指標は3種類に分けて置きます。計画どおりに進んだかを見る指標、時間がどう変わったかを見る指標、安全に使えているかを見る指標です。
| 種類 | 指標の例 | 測り方 | 主に見る期 |
|---|---|---|---|
| 進み具合 | ルールを配った日、使っている職員の数、手順書がある業務の数 | 責任者が期末に数える | 第1、第3四半期 |
| 時間 | 試した業務の、試す前と後の作業時間 | 担当者が始めた時刻と終えた時刻をメモする。前と後で同じ測り方にする | 第2、第4四半期 |
| 安全 | 入れてはいけない情報についての報告の件数、出力を直した回数、ルールを見直した日 | 報告先に届いた件数を責任者が記録する | 毎期 |
時間の指標だけを並べた計画は、理事会で必ず安全の質問を受けます。逆に安全の指標だけでは、費用をかける理由が説明できません。3種類を1つずつでも入れておくと、どちらの質問にも期末の数字で答えられます。
何を測るかに迷ったら、国が介護現場の業務改善で使っている項目が参考になります。厚生労働省の通知「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」(令和6年3月15日 老高発0315第4号)は、取組の成果を確かめる調査として次の5つを挙げています。
- 利用者の満足度等の評価
- 総業務時間及び当該時間に含まれる超過勤務時間の調査
- 年次有給休暇の取得状況の調査
- 介護職員の心理的負担等の評価
- 機器の導入等による業務時間(直接介護、間接業務、休憩等)の調査
同じ通知は、労働時間を原則としてタイムカードなどの客観的な記録で把握すること、取組の状況を確かめる委員会を3か月に1回以上開くことも求めています。3か月ごとに確かめるという間隔は、ここでも同じです。
ただし、この通知が扱うのは、見守り機器等のテクノロジーの導入を要件とする加算です。生成AIを入れれば加算を算定できる、という意味で引いているのではありません。借りるのは、職員の時間と負担、利用者への影響の両方を見るという指標の組み方だけです。
指標の数は、1つの期に3つまでに絞ることをおすすめします。測る手間が増えると、測ること自体が現場の負担になり、記録が続かなくなります。
予算はどう組めばいいのか
事業計画に1年分の動きを書き、それに対応する費目を資金収支予算書に入れます。指導監査ガイドラインは、法人は毎年度すべての収入と支出について予算を編成すること、資金収支予算書は事業計画をもとに、拠点区分ごとに資金収支計算書の勘定科目に準拠して作成することを示しています。つまり、12か月計画の表は事業計画の側の資料で、予算書はその裏づけになります。
計画表が先、予算書はその裏づけとして後から作る
- 12か月計画の表を作る事業計画の側の資料になる施設長
- 費目を2つの軸で分けるいつ発生するか、翌年度も続くか事務長
- 資金収支予算書に入れる拠点区分ごとに、勘定科目に準拠して作成する会計の担当者
- 年度が始まる前に承認を受ける作成と承認の手続は、定款の定めによる理事長
費目は、いつ発生するかと、翌年度も続くかで分けて並べます。
| 費目 | 発生する時期 | 翌年度も続くか | 理事会の資料に書くこと |
|---|---|---|---|
| 生成AIサービスの利用料 | 契約した月から毎月、または年払い | 続く | 何人分か、月払いか年払いか、途中で人数を変えられるか |
| 職員研修の費用 | 広げる期に集中する | 新しく入った職員の分が続く | 対象の職員、回数、勤務時間内に行うか |
| 外部の支援を頼む費用 | 契約の形による | 契約の形による | 頼む範囲、期間、終わった後に法人に残るもの |
| 端末や通信環境の費用 | 不足がある場合に、始める前 | 保守や通信の費用が続くことがある | 今ある端末で足りるかを確かめた結果 |
金額はサービスや契約で変わるので、この記事には書きません。資料には、見積書の金額をそのまま入れてください。どの勘定科目に入れるかは、御法人の経理規程と会計の担当者に確かめます。見積もりを何社から取るかの基準は、順番の記事の決裁の章に、厚生労働省の通知の金額と合わせて整理しています。
理事会の資料で抜けやすいのは、翌年度も続く費用の欄です。利用料のように毎月かかるものは、初年度の額だけでなく、翌年度に1年分でいくらになるかを並べて書きます。初年度が年度の途中から始まる場合、翌年度の額のほうが大きくなるためです。
予算を決める手続は法律では定められていません。指導監査ガイドラインは、定款で作成と承認の手続を定めておくべきだとし、定款例第31条第1項では、毎会計年度開始の日の前日までに理事長が予算を作成し、理事会の承認、または理事会の決議を経て評議員会の承認を受けるとしている、と示しています。表の第4四半期に来年度の予算を置いているのは、このためです。起案書の書き方はAI導入の稟議が理事会で通らない理由と、通る起案書の書き方にまとめています。
年度の途中から始めるときは、どう計画すればいいのか
残りの月を準備の期間にし、4月からの12か月を計画の本体にします。社会福祉法第45条の23第2項で、社会福祉法人の会計年度は4月1日に始まり翌年3月31日に終わると決まっているので、計画の1年を会計年度に揃えると、予算と決算の手続にそのまま乗ります。
10月から考え始めるなら、3月までの準備の期間にやることは3つです。利用ルールの案と責任者を決めること、試す業務の候補を挙げること、来年度の予算に入れる費目の見積もりを取ることです。ここまで済んでいれば、年度が始まる前の理事会に、計画表と予算の案を一緒に出せます。
準備の期間に試行まで進めたい場合は、今年度の予算に無い支出が出ます。指導監査ガイドラインは、年度の途中で予算との乖離が見込まれる場合は補正予算を編成するものとし、乖離が法人の運営に支障がなく軽微な範囲にとどまる場合はこの限りではない、としています。どこまでが軽微かは、規程や予算の中で定めておくことが望ましいとされています。御法人の経理規程に定めがあるかを、事務長が先に確かめてください。
もう1つ、第1四半期の計画は軽くしておきます。指導監査ガイドラインによれば、法人は毎会計年度終了後3か月以内に計算関係書類等を作成して所轄庁に提出し、計算書類等は毎年6月末日までに定時評議員会の承認を受けるか報告したうえで届け出ます。4月から6月は、事務長と会計の担当者が決算に時間を取られる時期です。この期に契約や研修を詰め込むと、計画の最初でつまずきます。表の第1四半期を、ルールの確定と試す前の測定だけにしているのは、この事情に合わせています。
止める、縮めるの判断は、いつ何で決めるのか
判断の時期は第2四半期の期末、基準は計画を出す時点で先に書いておきます。試行の結果が出た後で基準を考えると、すでに払った費用が惜しくなり、止める判断が出にくくなるためです。
当てはまる基準によって、やり直す、縮める、止めるに分かれる
基準は、成果指標と同じ3種類で1つずつ決めます。
- 進み具合の基準。期末までに試す前と後の両方の作業時間が記録されていない場合は、広げずに試行をやり直す。
- 時間の基準。試した後の作業時間が試す前より長いままの場合は、業務を替えるか、縮める。
- 安全の基準。入れてはいけない情報を入れたのに報告が上がらなかった場合は、利用を止め、ルールと研修を見直してから再開を決める。
安全の基準で見るのは、誤って入れたことそのものより、報告が上がったかどうかです。報告が上がり、ルールを直せたのなら、仕組みは働いています。報告が上がらない状態で広げると、次に起きたときも気づけません。
止めると決めた場合に備えて、契約の形も計画に書いておきます。利用料を月払いにするか年払いにするか、途中で人数を減らせるかは、予算の表に書く項目として先に挙げたとおりです。試行の期は月払いで小さく始め、広げると決めた期に契約を見直す形にすると、止める判断と予算の動きが揃います。つまずきやすい場面は福祉施設のAI導入が失敗する5つのパターンにも書いています。
よくある質問
- 年度の途中からでも、12か月計画は立てられますか。
- 立てられます。社会福祉法人の会計年度は4月1日に始まるので、年度の途中で思い立った場合は、残りの月を準備の期間に充て、4月からの12か月を計画の本体にすると予算の手続と揃います。準備の期間にやるのは、利用ルールの案と責任者を決めること、試す業務の候補を挙げること、来年度の予算に入れる費目の見積もりを取ることです。今年度のうちに支出が出る場合は、補正予算が要るかどうかを経理規程で確かめます。
- 成果指標は、金額に直して出さないといけませんか。
- 金額に直さなくても判断はできます。理事会が知りたいのは、続けるか、広げるか、止めるかを決める材料です。試す前と後の作業時間、出力を直した回数、入れてはいけない情報についての報告の件数を、測ったまま出してください。金額に直す場合は、どの式で直したかを資料に書き、見込みの数字と測った数字を分けて示します。
- 理事会への報告は、年に何回必要ですか。
- 社会福祉法第45条の16第3項は、理事長と業務執行理事が3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならないと定めています。定款で、毎会計年度に4か月を超える間隔で2回以上と定めた法人は、その回数になります。AI導入の報告だけのために理事会を開く必要はなく、この報告の中に入れる形で足ります。御法人の回数は定款で確かめてください。
- 計画どおりに進まなかったとき、予算はどうなりますか。
- 厚生労働省の指導監査ガイドラインは、年度の途中で予算との乖離が見込まれる場合は補正予算を編成するものとし、乖離が法人の運営に支障がなく軽微な範囲にとどまる場合はこの限りではないとしています。どこまでが軽微かは、規程や予算の中で定めておくことが望ましいとされています。使わなかった場合も、増えた場合も、まず経理規程の定めを確かめ、定めがなければ理事会で説明します。
- 生成AIを入れると、生産性向上推進体制加算を算定できますか。
- この記事では、成果指標の例として加算の通知を引いているだけで、生成AIを入れれば算定できるという意味ではありません。通知が加算の要件としているのは、見守り機器等のテクノロジーの導入、委員会の開催、実績データの報告などです。御法人の取組が要件に当たるかどうかは、通知の原文と指定権者で確かめてください。
まとめ|表1枚と、下に足す3行
理事会に出す12か月計画は、四半期ごとに、やること、成果指標、理事会に出すもの、予算の動きを並べた表1枚でした。区切りを四半期にするのは理事会への報告の間隔に、1年を4月始まりにするのは会計年度に合わせるためです。
表の下には、責任者の氏名、年間の費用の合計と翌年度も続く額、止める基準の3行を足します。今月やることを1つ選ぶなら、御法人の定款で、理事長の報告が年に何回と定められているかを確かめることです。その回数が、計画表の期の数になります。
出典
- 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第45条の16第3項(理事長等の職務の執行の状況の報告)、第45条の23第2項(会計年度) e-Gov法令検索
- 厚生労働省「社会福祉法人指導監査実施要綱の制定について」別紙 指導監査ガイドライン(平成29年4月27日、令和4年3月14日最終改正) https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000920120.pdf(理事長等の報告の回数と決議の省略の扱い、資金収支予算書と事業計画、定款例第31条第1項、補正予算と軽微な乖離、決算と定時評議員会の時期)
- 厚生労働省「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」(令和6年3月15日 老高発0315第4号、令和6年3月29日改正) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001238520.pdf(委員会の開催の間隔、実績として調査する5つの項目、労働時間の把握の方法)
この記事は2026年10月13日時点で公開されている情報に基づいています。通知やガイドラインは改正されることがあります。実際に報告の回数や予算の手続を決める際は、御法人の定款と規程、最新の通知、所轄庁の案内でご確認ください。
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出前講座の流れと申し込みを見る最終更新:2026-10-13
