AI利用規程には、何を書けば足りるのか(条の一覧表)
規程に書く条と、それぞれのよりどころを1枚にまとめました。右の列は、理事会や管理者会議で、なぜこの条が要るのかを聞かれたときの答えになります。
| 条 | 書くこと | よりどころ |
|---|---|---|
| 第1条 目的 第2条 定義 第3条 適用範囲 | 何のための規程か。生成AIと入力の意味。派遣労働者を含め、誰に適用するか | 従業者に対する必要かつ適切な監督(個人情報保護法第24条)。派遣労働者への教育研修の配慮(ガイダンス) |
| 第4条 管理責任者 | 責任者を誰が指名し、責任者が何をするか | 管理者、監督者等を定めるなどの組織体制の整備(ガイダンス) |
| 第5条 利用できるサービス | 法人が契約したサービスに限ること。載せる前に確認することと、確認日の記録 | 提供事業者が個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認する(個人情報保護委員会 注意喚起)。AI提供者が定めたサービス規約を遵守する(AI事業者ガイドライン) |
| 第6条 入力してはならない情報 | 入力しない情報の区分と、事例を扱うときの置き換え方 | 利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認する(注意喚起)。個人情報や機密情報等を不適切に入力することがないよう注意を払う(AI事業者ガイドライン) |
| 第7条 利用できる業務 第8条 出力の確認 | 使ってよい業務。出力は下書きとして扱い、人が事実を確かめること | 出力について精度及びリスクの程度を理解し、確認した上で利用する(AI事業者ガイドライン)。応答結果に不正確な内容が含まれることがある(注意喚起) |
| 第9条 誤入力等の報告 | 誤って入力したときの報告先と、その後の手順 | 漏えい等の事故や規程違反が生じた場合の責任者等への報告連絡体制の整備(ガイダンス) |
| 第10条 周知及び研修 | 採用時と定期の研修。周知の方法 | 従業者に対する教育研修の実施(ガイダンス) |
| 第11条 違反への対応 | 違反の取扱いは就業規則によること | 制裁の定めをする場合はその種類及び程度を就業規則に記載する(労働基準法第89条第9号) |
| 第12条 見直し 附則 | 見直す時期ときっかけ。施行日 | 安全管理措置について定期的に自己評価を行い、見直しや改善を行う(ガイダンス) |
表のガイダンスは、個人情報保護委員会と厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(令和8年4月一部改正)を指します。安全管理措置として、規程の整備、組織体制の整備、報告連絡体制の整備、雇用契約時における規程の整備、従業者に対する教育研修の実施などを挙げています。障害福祉や児童福祉の事業はこのガイダンスの対象に含まれないものがありますが、個人情報保護法第23条の安全管理措置と第24条の従業者の監督は、事業の種類にかかわらず個人情報取扱事業者に求められます。
AI事業者ガイドラインは、総務省と経済産業省が令和8年3月31日に公表した第1.2版を指します。事業活動でAIシステムやAIサービスを利用する事業者をAI利用者と呼び、利用時に重要な事項を挙げています。ガイドライン自身が非拘束的なソフトローと位置づけている文書で、守らなければ罰則があるというものではありません。法人の規程の条を説明するよりどころとして使います。
AI利用規程は、今ある規程とどうつなげればいいのか
社会福祉法人には、すでに個人情報保護規程と就業規則があります。生成AIの規程を、これらと関係のない独立した文書として作ると、同じことが2か所に書かれ、片方だけが改正されて食い違いが生まれます。つなげ方を先に決めてください。
個人情報保護規程との関係では、個人情報の定義、責任者、漏えい等が起きたときの手順は、個人情報保護規程の定めをそのまま使います。AI利用規程の側には、誤って入力したときは個人情報保護規程の手順に従って対応する、と書くだけにします。責任者も、個人情報保護の責任者と同じ人にするか、別に置く場合は報告の流れが1本になるように決めます。
就業規則との関係は、もう少し注意が要ります。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則を作成して行政官庁に届け出ることを義務づけています。記載する事項には、制裁の定めをする場合のその種類及び程度(第9号)と、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合のこれに関する事項(第10号)が含まれます。同法第90条は、就業規則の作成や変更について、労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことを求めています。
AI利用規程は、全職員に適用するルールです。これを就業規則の一部として扱うのか、就業規則とは別の業務上の規程として定めるのかで、意見の聴取や届出の要否が変わります。この記事では、どちらに当たるかの判断はしません。条文例は、違反の取扱いを就業規則に委ねる書き方にして、AI利用規程そのものには制裁を書かない形にしてあります。御法人の就業規則の構成でどう扱うかは、社会保険労務士か所轄の労働基準監督署に確かめてください。
もう1つ、秘密保持の定めとの関係があります。介護保険の指定居宅サービスの基準第33条は、従業者が正当な理由がなく業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならないこと、従業者であった者が秘密を漏らすことがないよう事業者が必要な措置を講じることを定めています。障害福祉サービスの指定基準第36条にも同じ趣旨の定めがあります。職員が個人で契約したサービスに利用者の情報を入れている状態は、法人がその情報の行き先を把握できていない状態です。AI利用規程は、この秘密保持の定めを、生成AIという新しい道具に当てはめ直したものと説明できます。
そのまま使える条文例は、どんなものか
次の条文例は、法人名、責任者、別表を書き換えれば使える形にしてあります。〇の所は御法人で決めて埋めてください。書き換える所の考え方は、次の章にまとめています。
生成AI利用規程
(目的)
第1条 この規程は、社会福祉法人〇〇(以下「法人」という。)の業務における生成AIの利用について必要な事項を定め、利用者、その家族及び職員の個人情報並びに法人の秘密情報を保護するとともに、業務の質の向上と負担の軽減を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この規程において生成AIとは、指示に応じて文章、画像、音声等を生成するサービスをいう。
2 この規程において入力とは、文字の入力のほか、ファイル、画像及び音声を生成AIに読み込ませることをいう。
(適用範囲)
第3条 この規程は、役員及び職員のほか、派遣労働者その他法人の指揮監督を受けて法人の業務に従事するすべての者(以下「職員等」という。)に適用する。
(管理責任者)
第4条 理事長は、生成AIの利用に関する管理責任者を指名する。
2 管理責任者は、利用できるサービスの確認、職員等への周知及び研修、第9条の報告の受付並びにこの規程の見直しを行う。
(利用できるサービス)
第5条 業務に利用できる生成AIは、法人が契約し、別表1に掲げるものに限る。
2 管理責任者は、サービスを別表1に掲げる前に、入力した内容が機械学習に利用されないことその他の利用条件を利用規約等により確認し、確認した日を記録する。
3 職員等は、個人で契約したアカウント及び別表1に掲げていないサービスを、業務に利用してはならない。
(入力してはならない情報)
第6条 職員等は、別表2に掲げる情報を生成AIに入力してはならない。
2 事例を用いて利用する場合は、別表2に定める方法により、特定の個人を識別できないように置き換えた上で入力する。
(利用できる業務)
第7条 生成AIを利用できる業務は、文章の下書き及び言い回しの整理、公開されている制度文書の要約、研修資料及び掲示物の案の作成その他管理責任者が認めたものとする。
2 職員等は、利用者への支援の内容、職員の評価その他人が判断すべき事項を、生成AIの出力のみによって決定してはならない。
(出力の確認)
第8条 職員等は、生成AIの出力を下書きとして扱い、事実関係を自ら確認し、必要な修正をした上で利用する。
2 生成AIの出力を用いて作成した記録、計画及び法人の外に出す文書の内容については、これを作成した職員等及び決裁した者が責任を負う。
3 生成AIの出力を法人の外に公表する場合は、他人の著作物等と同一又は類似のものでないかを確認する。
(誤入力等の報告)
第9条 職員等は、別表2に掲げる情報を生成AIに入力したとき、又はそのおそれがあるときは、直ちに管理責任者に報告する。
2 管理責任者は、報告を受けた事実を記録し、個人情報保護規程に定める手順に従って対応する。
3 法人は、前項の報告をしたことを理由として、当該職員等を不利益に取り扱わない。
(周知及び研修)
第10条 管理責任者は、この規程を職員等に周知し、採用時及び年〇回以上、生成AIの利用に関する研修を行う。
(違反への対応)
第11条 この規程に違反した場合の取扱いは、就業規則の定めるところによる。
(見直し)
第12条 管理責任者は、年〇回以上、及び利用するサービスの規約の変更又は関係する法令若しくは国の指針の改正があったときは、この規程を見直し、その結果を理事長に報告する。
附則
この規程は、令和〇年〇月〇日から施行する。
別表1 利用できるサービス(第5条関係)
サービスの名称、契約の種類、利用できる部署、利用規約等を確認した日、確認した者
別表2 入力してはならない情報と置き換え方(第6条関係)
1 利用者、その家族及び職員を特定できる情報(氏名、生年月日、住所、電話番号、被保険者番号、受給者証番号、顔写真等)
2 病歴、服薬、障害、認知症の診断その他の心身の状態に関する情報、事故及び虐待に関する情報並びに記録及びアセスメントの原文
3 職員の評価、面談の記録、健康状態、給与及び採用応募者に関する情報
4 理事会資料の原案、未公表の決算及び予算、契約の条件、調査中の事故の内容その他法人の秘密情報
5 システムのID及びパスワード
置き換え方 氏名はAさん、職員は職員B、日付は〇月〇日、年齢は80代のように幅を持たせ、ユニット名、珍しい病名、固有の出来事は外す。
第9条第3項は削らないでください。報告すると叱られる職場では、入力してしまったことが表に出てきません。この項が守るのは報告したことであって、入力したことそのものの扱いまで決めているわけではありません。その区別は説明会で言葉にして伝えます。
別表2の区分は、社会福祉法人がChatGPTに入れてはいけない情報の一覧の整理に合わせてあります。それぞれの情報をなぜ入れてはいけないのか、名前を消すだけではなぜ足りないのかは、そちらで説明しています。
条文例を御法人の個人情報保護規程と就業規則の言葉に合わせて直したい場合は、今の規程の構成を伺えば、書き換える所を一緒に整理できます。
公式LINEで相談する条文例のどこを、御法人に合わせて書き換えるのか
書き換える所は5つあります。条文の本体より、別表のほうに法人ごとの違いが出ます。
- 別表1のサービス名。法人が契約したサービスを書きます。入力した内容を学習に使うかどうかの扱いや設定の場所は、サービスごとに違い、変わることもあります。どのサービスなら安全かは、この記事では判断しません。公式の利用規約と設定画面を法人の担当者が読み、確認した日を別表に残してください。サービスを入れ替えるたびに規程の本体を改正しなくて済むように、サービス名は別表に出してあります
- 第4条の管理責任者。個人情報保護の責任者と同じ人にするかどうかを決めます。複数の事業所がある法人では、事業所ごとの窓口を置き、報告が法人本部の管理責任者に集まる流れにします
- 第6条と別表2の厳しさ。条文例は、利用者や職員を特定できる情報は入力しないという一律の書き方にしてあります。法人が契約したサービスに限って個人データの入力を認める場合は、個人情報保護委員会の注意喚起が示す2点、つまり利用目的の達成に必要な範囲内であることと、提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないこと等を、法人として確認した記録が要ります。利用者に示している利用目的との関係も含め、認める前に専門家に確かめてください
- 第7条の利用できる業務。最初は狭く書き、使い方が見えてきたら見直しで広げます。個別支援計画やケアプランに使う場合は、使ってよい工程と使わない工程を別に定めます。考え方は個別支援計画にAIを使う時につまずく所に書いています
- 第10条と第12条の回数。研修と見直しの回数は、法人が続けられる回数にします。守れない回数を書くと、規程そのものが守られていない状態になります
条の組み立ての参考になる公開資料に、デジタル庁の「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」(2026年6月12日 デジタル社会推進会議幹事会決定)があります。別紙2に、国の行政機関の職員向けの利活用ルールのひな形が付いていて、ルールの目的、利活用前のルール、入力データ又はプロンプトにおけるルール、AI生成物利活用におけるルール、問い合わせ先、という順に並んでいます。ひな形は、定型約款や規約等への同意のみで利用可能となるクラウドサービス型の生成AIを業務で使う場合は、原則として要機密情報を取り扱わないこととしています。社会福祉法人がこのガイドラインに従う義務はありませんが、個人のアカウントで規約に同意しただけのサービスを業務に使わせないという第5条第3項は、同じ考え方に立っています。
条文例の第8条第3項と、第7条第2項も、公開資料に手がかりがあります。デジタル庁のひな形は、AI生成物が既存の著作物の著作権を侵害するものでないかを必ず確認することを挙げています。AI事業者ガイドラインは、AIの出力結果を特定の個人又は集団に対する評価の参考にする場合に、AIを利用している旨の通知や、人間による合理的な判断を求めています。職員の評価や利用者への支援の内容をAIの出力だけで決めない、という条は、ここから来ています。
規程は誰が決めて、いつから効力を持たせるのか
どの機関で決めるかは、御法人の定款と、規程の制定や改廃の手続きを定めた規程によります。社会福祉法第45条の13は、理事会の職務として社会福祉法人の業務執行の決定を挙げ、重要な財産の処分及び譲受け、重要な役割を担う職員の選任及び解任など、理事に委任することができない重要な業務執行の決定を並べています。AI利用規程の制定がこれに当たるかを一律に言うことはできません。個人情報保護規程を理事会で定めている法人なら、同じ扱いにそろえるのが説明しやすい形です。
決め方は、次の3点を押さえてください。
- 規程の本体は理事会または理事長の決裁で定め、別表1のサービス名の入れ替えは管理責任者の確認と理事長への報告で行えるようにしておく。入れ替えのたびに理事会を開く形にすると、実際の運用が規程に追いつかなくなります
- 施行日は、決めた日ではなく、職員への説明が終わる日より後にする。説明を受けていない職員に、施行済みの規程を当てはめることは避けます
- 決めた日、決めた機関、施行日、管理責任者の氏名を、議事録か決裁文書に残す。理事会で諮るときの資料の作り方はAI導入の稟議が理事会で通らない理由と、通る起案書の書き方にまとめています
すでに職員が生成AIを使っている法人では、規程を決める前に、誰が、どのサービスを、どんな業務に使っているかを聞き取ってください。聞き取りで出てきた使い方が、第7条の利用できる業務と、別表2の入力してはならない情報の材料になります。法人全体で生成AIを入れていく順番は、社会福祉法人が生成AIを入れる順番に書いています。
職員には、どういう手順で配ればいいのか(手順の表)
規程は、配り方まで決めて初めて働きます。個人情報保護法第24条は、従業者に個人データを取り扱わせるに当たって、必要かつ適切な監督を行うことを求めています。ガイダンスは、教育研修の実施等により従業者の啓発を図ることを挙げ、派遣労働者についても教育研修の実施に配慮する必要があるとしています。配り方は6つの手順に分けられます。
| 手順 | やること | 残す記録 |
|---|---|---|
| 1 管理者に先に説明する | 施設長、管理者、サービス管理責任者などに、規程の案と、質問を受けたときの答え方を先に伝える。現場で最初に聞かれるのは管理者です | 説明した日と出席者 |
| 2 職員向けの1枚を作る | 規程から、職員が毎日守ることだけを現場の言葉で抜き出す。規程の名前、施行日、管理責任者の氏名と連絡先を入れる | 1枚の版と作成日 |
| 3 説明の場を持つ | 職員会議や申し送りの時間を使い、入力してはならない情報、使ってよいサービス、誤って入力したときの報告先の3つを口頭で伝える。夜勤や非常勤の職員には別の回を設ける | 回ごとの日付と出席者 |
| 4 いつでも見られる所に置く | 事務所への掲示や備え付け、書面の交付、職員が使うパソコンや端末で常に確認できる形のいずれかにする | 掲示や配布をした日と方法 |
| 5 読んだことを確かめる | 説明を受けて読んだことを、署名や回覧の確認欄で残す。出席できなかった職員が残っていないかを、管理責任者が名簿で確かめる | 確認欄のある名簿 |
| 6 新しく入る人と見直しに備える | 採用時の説明に入れる。派遣労働者にも同じ説明をする。規程や別表を改めたら、変えた所だけを1枚にして配り直す | 採用時の説明の記録、改正の履歴 |
手順4の3つの方法は、労働基準法第106条と同法施行規則第52条の2が、就業規則を労働者に周知させる方法として定めているものです。常時各作業場の見やすい場所へ掲示し又は備え付けること、書面を労働者に交付すること、電子的なファイルに記録して各作業場に労働者が内容を常時確認できる機器を設置すること、の3つです。AI利用規程を就業規則の一部として扱う場合は、この方法による周知が必要になります。別の規程として定める場合も、同じ方法にそろえておけば、職員から見て探す場所が1つで済みます。
職員向けの1枚の文例は、社会福祉法人がChatGPTに入れてはいけない情報の一覧に載せています。規程の第5条から第9条までを、職員が読む言葉に直した内容になっているので、条文例と組み合わせて使えます。
説明の場で伝えることを3つに絞っているのは、すべての条を読み上げても残らないからです。規程は、すでに使っている職員を止めるためのものではありません。使ってよい範囲が決まれば、職員は安心して使えます。説明の最初にこの点を伝えると、その後の話が届きやすくなります。職員への研修の前に、理事長や施設長が先に何を学ぶかは、理事長・施設長が最初に受ける生成AI研修の選び方で整理しています。
配った後に確かめることは多くありません。管理責任者に報告や質問が届いているか、別表1にないサービスを使っている職員がいないかの2つを、見直しの時期に管理者から聞き取ります。報告も質問も1件もない場合は、問題が起きていないのではなく、規程が読まれていない可能性を先に疑ってください。
よくある質問
- AI利用規程と、職員向けのルール1枚は、何が違うのですか。
- 規程は、法人が何を決めたかを残す文書です。責任者、使ってよいサービスの決め方、報告の手順、見直しの時期まで書き、理事会や理事長の決裁を経て定めます。職員向けの1枚は、その中から職員が毎日守ることだけを現場の言葉で抜き出したものです。規程だけでは現場に読まれず、1枚だけでは法人として決めた記録が残りません。両方を作り、1枚には規程の名前と施行日を書いて結び付けておきます。
- 職員が10人に満たない事業所でも、規程は必要ですか。
- 労働基準法第89条が就業規則の作成と届出を義務づけているのは、常時10人以上の労働者を使用する使用者です。一方、個人情報保護法第23条の安全管理措置と第24条の従業者の監督は、職員の人数にかかわらず個人情報取扱事業者に求められます。人数が少ない事業所でも、使ってよいサービス、入力してはならない情報、報告先の3つは書面で決めておくことをおすすめします。条の数は減らしてかまいません。
- 規程に違反した職員を、懲戒の対象にできますか。
- 規程に書いただけで懲戒できるとは言えません。労働基準法第89条第9号は、制裁の定めをする場合はその種類及び程度を就業規則に記載するよう求めています。労働契約法第15条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない懲戒は無効とすると定めています。条文例では、違反の取扱いは就業規則の定めによると書くにとどめています。今の就業規則の懲戒の条でこの規程の違反を扱えるかは、社会保険労務士に確かめてください。
- 秘密保持の誓約書は、取り直す必要がありますか。
- 取り直しを義務とする定めは、今回確認した資料では見当たりませんでした。個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンスは、雇用契約や就業規則において、就業期間中はもとより離職後も含めた守秘義務を課すなど、従業者の個人情報保護に関する規程を整備し徹底を図ることを求めています。今の誓約書の文面が、外部のサービスへの入力も含むと読めるかを確かめ、読みにくい場合は、次の更新や採用の時から文面を改める方法があります。
- 国が公開しているひな形を、そのまま法人の規程にしてよいですか。
- そのままでは使いにくいと考えます。デジタル庁のガイドラインに付いている利活用ルールのひな形は、国の行政機関の職員向けに書かれており、要機密情報や情報セキュリティポリシーなど、行政機関の制度を前提にした言葉が使われています。目的、利用前のルール、入力のルール、生成物の利用のルール、問い合わせ先という骨組みを参考にし、中身は法人の個人情報保護規程と就業規則の言葉に合わせて書き直してください。
まとめ|規程は短く、配り方は丁寧に
法人の生成AI利用規程は、12の条と別表2つで足ります。個人情報保護規程と就業規則にすでにある定めは繰り返さず、責任者、使ってよいサービス、入力してはならない情報、出力の確認、誤入力の報告、周知と見直しという、生成AIに固有のことだけを書きます。
手間をかける所は、条文より配り方です。管理者に先に説明し、職員向けの1枚を作り、説明の場を持ち、読んだことを確かめる。最初の一歩は、今の個人情報保護規程と就業規則を机に並べ、条文例の第4条、第9条、第11条が、それぞれのどの条につながるかを書き込むことです。
出典
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057(第23条 安全管理措置、第24条 従業者の監督)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日) https://www.ppc.go.jp/news/press/2023/230602kouhou/(別添1の個人情報取扱事業者における注意点と一般の利用者における留意点)
- 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日、令和8年4月一部改正) https://www.mhlw.go.jp/content/001470633.pdf(安全管理措置として考えられる事項のうち、規程の整備、組織体制等の整備、報告連絡体制の整備、雇用契約時における規程の整備、従業者に対する教育研修の実施)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/20260331_report.html(AI利用者の定義、第5部 AI利用者に関する事項、非拘束的なソフトローという位置づけ)
- デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」(デジタル社会推進標準ガイドライン DS-920、2026年6月12日 デジタル社会推進会議幹事会決定) PDF(別紙2 生成AIシステム利活用ルール ひな形 Ver2.0)
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049(第89条 作成及び届出の義務、第90条 作成の手続、第106条 法令等の周知義務)
- 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023(第52条の2 周知の方法)
- 労働契約法(平成19年法律第128号)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128(第15条 懲戒)
- 社会福祉法(昭和26年法律第45号)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000045(第45条の13 理事会の権限等)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037(第33条 秘密保持等)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171(第36条 秘密保持等)
この記事は2026年10月9日時点で公開されている法令と資料に基づいています。条文例は、規程を作るときの土台として示したもので、御法人の定款、個人情報保護規程、就業規則との整合は個別に確かめる必要があります。就業規則との関係や懲戒の扱いは社会保険労務士に、個人情報の取扱いの判断は所管の自治体や弁護士などの専門家にご相談ください。生成AIサービスの規約や国のガイドラインは改定されることがあります。
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最終更新:2026-10-09
