3回分の数字を、枠ごとに並べる
事務局である中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局は、交付決定事業者一覧のページで、締切回ごと枠ごとの申請数と交付決定数を公表しています。3次締切分までの数字がそろったので、そのまま並べます。割合は申請数に対する交付決定数で、こちらで計算したものです。
| 締切回と枠 | 申請数 | 交付決定数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1次締切分 通常枠 | 2,028 | 891 | 43.9% |
| 1次締切分 インボイス枠(インボイス対応類型) | 4,324 | 2,027 | 46.9% |
| 1次締切分 セキュリティ対策推進枠 | 88 | 64 | 72.7% |
| 1次締切分 3枠の合計 | 6,440 | 2,982 | 46.3% |
| 2次締切分 通常枠 | 1,879 | 819 | 43.6% |
| 2次締切分 インボイス枠(インボイス対応類型) | 3,790 | 2,096 | 55.3% |
| 2次締切分 セキュリティ対策推進枠 | 28 | 20 | 71.4% |
| 2次締切分 3枠の合計 | 5,697 | 2,935 | 51.5% |
| 3次締切分 通常枠 | 1,913 | 807 | 42.2% |
| 3次締切分 インボイス枠(インボイス対応類型) | 3,982 | 1,781 | 44.7% |
| 3次締切分 セキュリティ対策推進枠 | 18 | 13 | 72.2% |
| 3次締切分 3枠の合計 | 5,913 | 2,601 | 44.0% |
インボイス枠の電子取引類型は、1次から3次まで申請数も交付決定数も0でした。複数者連携デジタル化・AI導入枠は1次締切分の交付決定が7月23日に出ており、申請2者に対して交付決定1者です。件数が小さすぎて割合を語る意味がないので、以下は通常枠を中心に見ます。
通常枠は44%ではなく42%で、しかも横ばい
報道や補助金の情報サイトで見出しになるのは、3枠を合計した44.0%という数字です。しかし福祉事業所が申請するのはほぼ通常枠なので、当てはめるべきなのは42.2%のほうです。
そして通常枠の並びを見ると、43.9%、43.6%、42.2%です。3回とも4割強で、差は2ポイントもありません。申請数も2,028、1,879、1,913で、大きく増減していない。つまり通常枠については、急に厳しくなったというより、最初からずっと同じ水準だったと読むほうが実態に近いはずです。3回合計では5,820者の申請に対して2,517者の交付決定で、43.2%になります。
この読み方が実務でどう効くかというと、稟議のときの言い方が変わります。採択率が下がっているから急いで出す、という説明は数字の裏づけがありません。通常枠については、いつ出しても半分強は通らない。だから理事会に出す起案書には、落ちたときにどうするかを最初から書いておくほうが通ります。稟議そのものの書き方はAI導入の稟議が理事会で通らない理由にまとめてあります。
自法人が通常枠とインボイス枠のどちらを見るべきか、導入したいソフトの名前から仕分けます。無料です。
公式LINEで相談する全体の数字を動かしていたのはインボイス枠
では、全体の51.5%から44.0%への落差はどこから来たのか。表を縦に見ると分かります。インボイス枠のインボイス対応類型が、46.9%、55.3%、44.7%と大きく上下しているためです。申請数が通常枠の倍あるので、合計の数字はこちらに引っ張られます。
ここが、この制度の数字を読むときのいちばんの落とし穴です。通常枠を申請しようとしている法人が、インボイス枠の変動を含んだ合計の数字を見て一喜一憂しても、判断材料になりません。次に5次締切分の結果が出たときも、まず枠別の内訳を開いてください。事務局のページは締切回と枠ごとに行が分かれているので、通常枠の行だけを見れば済みます。
不採択の理由は開示されない
数字を見た次に多い質問が、落ちた理由を聞けるのか、というものです。公募要領には、採択と不採択のどちらであっても審査内容は開示しないこと、不採択理由についても事務局から通知する事項以外は開示しないことが、はっきり書かれています。
つまり、落ちてから原因を調べに行くという動き方ができません。この制度で打てる手は、公募要領に明記されている減点と不採択の条件を、出す前に自分で照合しておくことだけです。ここから先はその照合の話です。
公募要領に書いてある、点が引かれる3つ
通常枠の公募要領には、審査上の減点措置として3つが列挙されています。加点項目のほうは15項目あって全部を追うのは大変ですが、減点のほうは3つだけなので、こちらを先に見るのが早いです。
| 減点措置の対象 | 公募要領の書きぶり |
|---|---|
| 過去の交付決定 | IT導入補助金2022から2025までの間に交付決定を受けた事業者 |
| 同じ年のインボイス枠 | デジタル化・AI導入補助金2026において、インボイス枠(インボイス対応類型および電子取引類型)で申請を行っている、もしくは交付決定を受けた事業者。上の2つで選んだITツールと同一の機能(会計・受発注・決済)を持つITツールを導入する場合は、さらに減点 |
| プロセスの重複 | IT導入補助金2024または2025において交付決定を受けたソフトウェアのプロセスと、今回導入するソフトウェアが有するプロセスが重複する事業者。プロセスが完全に一致する場合は不採択 |
3つめの最後の一文が、この制度でいちばん重い条件です。減点ではなく、不採択と書いてあります。
あわせて、申請そのものができない期間もあります。公募要領には、IT導入補助金2025の通常枠と複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、グループ構成員を含めて、交付決定日から12カ月以内はデジタル化・AI導入補助金2026の通常枠に申請できないと書かれています。昨年度に使った法人は、まずこの12カ月を数えるところからです。
福祉事業所がいちばん当たりやすいのはプロセスの重複
なぜプロセスの重複が福祉事業所で当たりやすいかというと、入れたいものが毎年似ているからです。
2024年や2025年に介護記録ソフトを入れた事業所が、今年はケアプランの作成管理や請求業務まで広げたいと考える。このとき、新しく選んだソフトが登録しているプロセスが、前回のソフトと同じ範囲を含んでいることがよくあります。記録ソフトは多機能なので、1本で複数のプロセスを持っているためです。完全に一致すれば不採択、一部が重なれば減点という扱いになります。
確認の仕方は単純で、自分では調べられません。自社が何プロセスで登録されているか、前回のツールと重なるかを把握しているのはIT導入支援事業者のほうです。次の3つを、支援事業者に文章で聞いてください。口頭で聞くと、後から確認できません。
- 今回提案してもらうITツールは、どのプロセスで登録されていますか。プロセス名を全部教えてください。
- 当法人が2024年と2025年に交付決定を受けたソフトのプロセスと、重なるものはありますか。
- 重なる場合、完全一致になりますか。一部重複であれば、どのプロセスが重なりますか。
前回の交付決定の内容が法人側で分からなくなっている場合もあります。そのときは、当時の交付決定通知と実績報告の控えを先に探してください。これが出てこない法人は、だいたい担当者が代わっています。書類の探し方も含めて、補助金の交付決定が出た後にやることで触れています。
審査項目は、課題と機能が噛み合っているか
減点の照合が終わったら、審査そのものの話に入ります。公募要領には、主な審査項目として事業面、計画目標値、政策面の3つが挙げられています。事業面の審査事項として書かれているのは、次のような内容です。
自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか。自社の状況や課題分析および将来計画に対し改善すべきプロセスが、導入するITツールの機能により期待される導入効果とマッチしているか。内部プロセスの高度化、効率化およびデータ連携による社内横断的なデータ共有・分析等を取り入れ、継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか。セキュリティ対策を進めているか。
読み替えると、課題と機能が噛み合っているかを見られています。福祉事業所の申請で噛み合わなくなりやすいのは、課題のほうを大きく書きすぎるときです。人手不足を解消したい、職員の定着率を上げたいと書いて、入れるものが請求ソフトだと、両者がつながりません。
逆に、課題を小さく具体的に書くと噛み合います。月末の請求業務に事務員2名で延べ何時間かかっている、返戻の処理に何日かかっている、という書き方です。そしてその時間が、導入するツールのどの機能で何時間減るのかを書く。審査は原則として提出された書類だけで行うと公募要領に明記されているので、書いていないことは読み取ってもらえません。
ここで必要になる導入前の数字は、申請してから集めようとすると間に合いません。事務員に月末の作業の開始時刻と終了時刻をメモしてもらうだけで足ります。測り方は介護テクノロジー補助金は採択後に止まるの3つめに書いたやり方が、そのまま使えます。
落ちた回の次に、もう一度出せる
通常枠の申請回数は、1法人または1個人事業主あたり1回のみで、同時に複数の交付申請はできません。ただし公募要領には、各締切回で公表される採択結果で不採択となった場合は、次回以降の締切までに交付申請が可能と書かれています。交付決定後から補助金の交付を受けるまでに取り下げた場合も同じです。
注意が要るのは取り下げのほうです。事務局から再提出を指示された場合を除いて、一度提出した交付申請は結果が公表されるまで取り下げられません。出してから内容を直したくなっても、その回は動かせないということです。
それから、同じ年の別の枠への申請は可能とされています。通常枠を出しながら、インボイス枠やセキュリティ対策推進枠を申請して交付を受けることはできる。ただし、先に見たとおり、インボイス枠で申請していること自体が通常枠の減点対象です。さらに公募要領は、補助対象経費の二重計上など不適切な行為が疑われる場合は交付決定の取消しと全額返還を求めることがあるとしていて、特にオプションと役務は二重計上になりやすいと名指しで注意しています。枠をまたいで出すなら、支援事業者と経費の割り当てを1行ずつ確認してからにしてください。
5次締切は9月29日17時、今日から9日
通常枠の5次締切は2026年9月29日(火)17時、交付決定日は2026年11月9日(月)の予定です。この記事を公開した9月20日から数えて9日です。事業実施期間と事業実績報告の期限は2027年4月30日(金)17時の予定とされています。6次以降の日程は、この記事の作成時点では公表されていません。
| 項目 | 通常枠の内容 |
|---|---|
| 補助額 | 1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下 |
| 補助率 | 2分の1以内。令和6年10月から令和7年9月までの間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上であることを示した場合は3分の2以内 |
| 対象経費 | ソフトウェア購入費とクラウド利用料(最大2年分)が必須。機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ、導入や活用のコンサルティング、導入設定・マニュアル作成・導入研修、保守サポートがオプション |
| 5次締切 | 2026年9月29日(火)17:00 |
| 交付決定日 | 2026年11月9日(月)(予定) |
| 事業実績報告期限 | 2027年4月30日(金)17:00(予定) |
9日で何ができるかは、GビズIDプライムを持っているかどうかで分かれます。持っていない法人は、取得に要する期間だけで締切を越える可能性があります。締切までに何をどの順で確かめるかは、デジタル化・AI導入補助金2026 福祉事業所が9月29日までに確認する順番に7つの工程として分けて書きました。この記事とあわせて読んでください。
今回間に合わないと判断したなら、それはそれで手はあります。減点の3つを照合し、前回の交付決定の書類を探し、導入前の数字を1か月とる。この3つを6次締切までにやっておくほうが、急いで出して42%のくじを引くより確実です。6次締切の日程は事務局が随時更新するとしているので、事業スケジュールのページを月に一度見ておけば足ります。
減点の3つに自法人が当たるかどうか、過去の交付決定の状況を伺えば一緒に照合できます。
公式LINEで相談するよくある質問
- 採択率44%というのは、通常枠の数字ですか。
- 違います。44.0%は3次締切の3つの枠を合計した数字です。内訳は事務局が公表しており、通常枠は申請1,913者に対して交付決定807者で42.2%、インボイス枠のインボイス対応類型は3,982者に対して1,781者で44.7%、セキュリティ対策推進枠は18者に対して13者で72.2%でした。記録ソフトや請求ソフトを入れたい福祉事業所が申請するのは通常枠なので、見ておく数字は42%のほうです。
- 不採択になった理由は教えてもらえますか。
- 公募要領には、採択と不採択のどちらであっても審査内容は開示せず、不採択理由についても事務局から通知する事項以外は開示しないと書かれています。したがって、落ちた理由を後から問い合わせて確かめることはできません。逆算できるのは、公募要領に明記されている減点措置と不採択の条件だけです。
- 過去にIT導入補助金を使ったことがあると不利になりますか。
- 公募要領の減点措置に、IT導入補助金2022から2025までの間に交付決定を受けた事業者が挙げられています。さらに、2024または2025で交付決定を受けたソフトウェアのプロセスと今回導入するソフトウェアのプロセスが重複する場合も減点で、プロセスが完全に一致する場合は不採択とすると明記されています。また、IT導入補助金2025の通常枠と複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、交付決定日から12カ月以内は2026の通常枠に申請できません。
- 3次で落ちた場合、もう一度出せますか。
- 出せます。通常枠の申請回数は1法人または1個人事業主あたり同時に1回までですが、公募要領には、各締切回で公表される採択結果で不採択となった場合は次回以降の締切までに交付申請が可能と書かれています。なお、一度提出した交付申請は、事務局から再提出を指示された場合を除いて結果が公表されるまで取り下げられません。
まとめ|見る数字を42%に取り替える
3次締切の全体は44.0%でしたが、通常枠は42.2%でした。そして通常枠は1次から43.9%、43.6%、42.2%と、ほとんど動いていません。全体の数字を上下させていたのは、申請数が倍あるインボイス枠のほうです。
不採択の理由は開示されないので、出す前に公募要領と照合するしかありません。照合するのは3つ。過去の交付決定、同じ年のインボイス枠との同時申請、そしてプロセスの重複です。3つめだけは、完全に一致すると不採択と書かれています。
今日やることを1つ選ぶなら、IT導入支援事業者に、提案されているITツールの登録プロセス名を文章で出してもらうことです。前回入れたソフトと重なっているかどうかが、その場で分かります。ここが白なら、残りの日数を書類の中身に使えます。
出典
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「交付決定事業者一覧(申請数および交付決定数)」https://it-shien.smrj.go.jp/download/grantdecision_list/(1次から3次締切分までの枠別の申請数と交付決定数。合計と割合は当社で計算)
- 同事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」https://it-shien.smrj.go.jp/pdf/it2026_koubo_tsujyo.pdf(審査項目と審査事項、加点項目、減点措置の3項目とプロセス完全一致の不採択、申請単位と申請回数、IT導入補助金2025の交付決定から12カ月の制限、不採択理由の非開示、複数枠申請時の二重計上の注意)
- 同事務局「通常枠」https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/(補助率、補助額、対象経費、5次締切と交付決定日、事業実績報告期限)
- 同事務局「事業スケジュール」https://it-shien.smrj.go.jp/schedule/(締切日程、6次以降が未公表であること)
- 中小企業庁「補助金採択結果」https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/saitaku.html(1次から3次までの採択の公表)
この記事は2026年9月20日時点で公開されている情報に基づいています。表の割合は、事務局が公表している申請数と交付決定数から当社が計算したもので、事務局が採択率として公表している数値ではありません。事務局は制度内容やスケジュールが変更される場合があるとしています。5次締切分の結果や6次以降の日程が公表された場合は、内容を確認のうえ追記します。
減点の3つに当たっていないか、無料で一緒に照合します
過去にIT導入補助金を使った年度、そのときのソフト名、今回提案されているソフト名を伺えば、プロセスの重複が起きそうかどうかと、支援事業者に何を文章で確認すればよいかを1枚にしてお返しします。採択の見込みは申し上げません。申請マイページの入力と提出は、申請者ご自身と支援事業者で行っていただきます。
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