議事録づくりのどの工程を、AIに任せられるのか(工程別の表)
議事録づくりを工程に分けると、AIに任せやすい所と、人が手放してはいけない所がはっきり分かれます。手間がかかっているのは、録音を聞き直して文字にし、話の流れを要約する前半です。ここはAIが得意な所で、事務長や担当職員の時間を大きく減らせます。後半の確認と確定は、法令が法人と出席した役員に求めている所なので、AIに任せきりにはできません。
| 工程 | AIに任せられること | 人が残すこと |
|---|---|---|
| 1 開催前の準備 | 議題と資料から、議事録の枠(日時、場所、議題、議案ごとの見出し)を下書きする | 録音することを出席者に伝え、同意を得る。使うサービスを法人で決めたものに限る |
| 2 会議中 | 録音をもとにした文字起こし | 出席者と出席の方法(会場か、テレビ会議などか)の確認。特別の利害関係がある理事が議決から外れたことの確認 |
| 3 要約 | 文字起こしから、議案ごとの議事の経過の要領と結果の下書きを作る | 決議の結果と、各理事の賛否、異議の有無が正しく書かれているかの確認 |
| 4 記載事項の点検 | 法定の記載事項の一覧と照らして、抜けていそうな所を指摘させる | 一覧の各項目が本当にそろっているかを、人が一つずつ確かめる |
| 5 確定 | 表現の整え(敬称、用語の統一、誤字) | 最終の文言を決める。署名又は記名押印、電子署名をもらう |
| 6 保存 | ファイル名や保管場所の一覧づくり | 主たる事務所に10年間備え置く(社会福祉法第45条の15第1項)。録音データを残すか消すかを決める |
この表で人が残すことは、どれも短い作業です。録音を2回聞き直して書き起こす時間に比べれば、確認と確定にかける時間はずっと少なくて済みます。省ける時間を確認に回す、というのがこの記事の考え方です。録音から配布までの具体的な手順やプロンプトの例は、福祉施設の会議録・法定委員会の議事録をAIで作る手順にまとめています。
理事会の議事録には、何を書くと法令で決まっているのか
理事会の議事録の内容は、社会福祉法施行規則第2条の17第3項に並んでいます。法令の本文を要約すると、次の8つです。
- 理事会が開かれた日時と場所。会場にいない理事、監事又は会計監査人が出席した場合は、その出席の方法も含む
- 理事の請求を受けて招集された、理事が招集した、監事の請求を受けて招集された、監事が招集した、のいずれかに当たるときは、その旨
- 理事会の議事の経過の要領とその結果
- 決議を要する事項について特別の利害関係を有する理事があるときは、その理事の氏名
- 競業や利益相反取引をした理事の報告、監事の報告や意見など、法令の規定により理事会で述べられた意見や発言があるときは、その内容の概要
- 定款で議事録に署名又は記名押印する人を理事長とする定めがあるときは、理事長以外で理事会に出席した理事の氏名
- 理事会に出席した会計監査人の氏名又は名称
- 議長がいるときは、議長の氏名
AIの下書きで抜けやすいのは、2、4、5、6です。文字起こしには、誰の請求で招集されたかや、誰が議決に加われなかったかは、会議の中で口に出さない限り出てきません。監事の意見は話の流れの中に埋もれやすく、要約の段階で落ちることがあります。こうした事項は、録音ではなく、招集の記録や出席簿、議案ごとのメモで人が確かめます。
もう一つ気をつけたいのが、3の議事の経過の要領です。社会福祉法第45条の14第8項は、理事会の決議に参加した理事で、議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定すると定めています。AIは長い議論を短くまとめるときに、少数の反対意見を落とすことがあります。反対した理事の異議が議事録から消えると、その理事が賛成したと推定されかねません。賛否と異議は、要約に任せず人が確かめる所です。
理事全員の同意で決議を省略した場合(いわゆるみなし決議)や、理事会への報告を省略した場合は、同じ条の第4項に別の記載事項が定められています。みなし決議の場合は、決議があったものとみなされた事項の内容、提案した理事の氏名、決議があったものとみなされた日、議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名です。会議を開かないので録音もありません。この場合は、同意書などの書面からAIで枠を作り、人が中身を埋める形になります。
評議員会の議事録は、社会福祉法施行規則第2条の15に別に定められています。理事会とは項目が少し違い、評議員会に出席した評議員、理事、監事又は会計監査人の氏名や、議事録の作成に係る職務を行った者の氏名も内容に含まれます。理事会の枠を使い回さず、評議員会用の枠を別に作っておきます。
御法人の理事会と評議員会の議事録の枠を、法令の記載事項と照らして一緒に点検することもできます。AIの下書きを入れる前に、枠を整えるところから始めたい場合もご相談ください。
公式LINEで相談する署名又は記名押印と保存は、誰が何をするのか
ここは、AIが代わりにできない所です。社会福祉法第45条の14第6項は、議事録が書面で作られているときは、出席した理事と監事が署名又は記名押印しなければならないと定めています。定款で、議事録に署名又は記名押印する人を出席した理事長とする定めがある場合は、出席した理事長と監事になります。
| 決まっていること | 法令の本文 | 法人で確かめること |
|---|---|---|
| 議事録の形式 | 書面又は電磁的記録で作成する(施行規則第2条の17第2項) | 紙で作るか、電子で作るか |
| 書面の場合の署名 | 出席した理事(定款の定めがあれば出席した理事長)と監事が署名又は記名押印する(法第45条の14第6項) | 自法人の定款に、議事録署名人の定めがあるか、誰になっているか |
| 電子の場合の署名 | 署名又は記名押印に代わる措置として電子署名をとる(法第45条の14第7項、施行規則第2条の18) | 作成者が分かり、改変がないか確かめられる電子署名の手段を用意しているか |
| 備え置き | 理事会の日から10年間、主たる事務所に備え置く(法第45条の15第1項) | どこに、誰が、どの形で保管するか |
| 閲覧 | 評議員は業務時間内いつでも閲覧又は謄写を請求できる(法第45条の15第2項) | 求められたときに、すぐ出せる状態か |
署名する理事長や監事は、AIが作った下書きではなく、確定した議事録に署名することになります。署名を頼む前に、事務長が記載事項を確かめ、理事長が最終の文言を決める順番にしておくと、署名した後で直す手間がなくなります。所轄庁の指導監査では、議事録に必要な事項が書かれているか、署名等がされているか、主たる事務所に備え置かれているかが確認されます(厚生労働省 指導監査ガイドライン)。
現場の会議録と理事会の議事録は、なぜ分けて考えるのか
法人の中で議事録と呼ばれるものは、大きく2つに分かれます。理事会や評議員会の議事録は、社会福祉法と施行規則が記載事項、署名又は記名押印、備え置きの期間まで定めている、法人の意思決定の記録です。施設の職員会議や、各サービスで開く委員会の記録は、それぞれのサービスの運営基準や加算の要件、法人の規程で求められる内容に合わせて作る記録です。
この2つを同じルールで扱うと、どちらかに無理が出ます。理事会と同じ確認を現場の会議録すべてに求めると、AIで省いた時間が確認に消え、現場は結局使わなくなります。反対に、現場の会議録と同じ感覚で理事会の議事録をAIに任せると、法定の記載事項や異議の記録が抜けたまま署名に回ることになります。
現場の会議録は、要約の下書きをAIに任せ、会議の主催者が読んで直したら確定、という軽い流れで十分な場面が多いはずです。ただし、運営基準や加算の要件で記録が求められている委員会は、求められている項目がそろっているかだけは人が確かめます。生産性向上委員会の議事録の型は生産性向上委員会で生成AIをどう話し合うかに載せています。
録音するとき、出席者に何を伝えればいいのか
AIで文字起こしをするには録音が要ります。録音は、出席者の同意を得てから始めてください。理事会や委員会では、利用者の処遇や職員の人事など、個人に関わる話が出ることがあります。黙って録音すると、出席者が発言を控えるようになり、会議そのものが形だけになりかねません。
会議の冒頭で伝えることは、次の4つです。
- 議事録を作るために録音すること
- 録音を文字にするのに使うサービスの名前
- 録音と文字起こしのデータを、誰が、どこに、いつまで保存し、いつ消すか
- 録音してほしくない発言があれば、その間は止めること
同意を得たことは、議事録の材料として記録に残しておきます。外部の生成AIサービスや文字起こしサービスに音声や文字を渡す場合は、個人情報保護委員会の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」が、個人情報取扱事業者に向けて、個人情報を含むプロンプトを入力する場合は利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認すること、提供事業者が入力された個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認することを求めています。利用者の名前や病状が出る議題では、録音を止めるか、文字起こしの後に人が伏せてからAIの要約に回すかを決めておきます。入れてよい情報と入れない情報の線は、社会福祉法人がChatGPTに入れてはいけない情報の一覧で整理しています。
法人として、何を決めておけばいいのか
議事録にAIを使い始める前に、次の5つを法人として決めておきます。決めた内容は、職員向けの生成AI利用ルールか、文書管理の規程に書き加えます。
| 決めること | 決める人の目安 | 決め方の例 |
|---|---|---|
| どの会議でAIを使うか | 理事長 | まず現場の委員会で試し、理事会と評議員会はその後に広げる |
| 使うサービス | 生成AIの利用の責任者 | 入力データを学習に使わない設定や契約を確かめたものに限る |
| 録音の同意と、録音データの扱い | 事務長 | 冒頭で伝える文を決め、録音データは議事録の確定後に消すか、期間を決めて残す |
| 理事会の議事録の確認の順番 | 事務長と理事長 | 事務長が法定の記載事項を点検し、理事長が最終の文言を決め、それから署名を回す |
| 議事録の枠 | 事務長 | 理事会用、評議員会用、みなし決議用、現場の委員会用を分けて作る |
1つ目のどの会議から始めるかは、現場の委員会を先にすることをお勧めします。記載事項や署名の決まりがある理事会で最初に試すと、AIの癖が分からないまま確認の負担だけが増えます。現場の委員会で、どんな所が抜けやすいか、要約がどんな言い回しになるかをつかんでから、理事会に広げるほうが確認の勘所が分かります。生成AIを法人に入れる順番全体は社会福祉法人が生成AIを入れる順番に、理事会に諮るときの起案書の書き方はAI導入の稟議が理事会で通らない理由と、通る起案書の書き方に書いています。
よくある質問
- AIの文字起こしを、そのまま理事会の議事録にしてもよいですか。
- そのままでは使わないでください。社会福祉法施行規則第2条の17第3項が理事会の議事録の内容として求めているのは、議事の経過の要領及びその結果などで、発言をすべて書き写すことではありません。一方で、特別の利害関係を有する理事の氏名や、監事が述べた意見の概要など、文字起こしからは自動では拾われにくい事項も並んでいます。文字起こしは下書きの材料とし、記載事項を人が一つずつ確かめてから確定します。
- 議事録を電子で作り、電子で署名してもよいですか。
- できます。社会福祉法施行規則第2条の17第2項は、理事会の議事録を書面又は電磁的記録で作成するとしています。電磁的記録で作成した場合、社会福祉法第45条の14第7項と施行規則第2条の18により、署名又は記名押印に代わる措置として電子署名をとる必要があります。電子署名の要件は、作成した人が分かることと、改変されていないか確かめられることの2つです。
- 録音データは、いつまで保存すればよいですか。
- 社会福祉法第45条の15第1項が10年間の備え置きを求めているのは、理事会の議事録等です。今回確認した社会福祉法と施行規則の本文には、録音データそのものの保存期間を定めた規定は見当たりませんでした。録音を残すか、議事録の確定後に消すかは法人で決め、規程や運用ルールに書いておきます。迷う場合は所轄庁に確かめてください。
- 会議を録音するのに、出席者の同意は要りますか。
- 同意を取ってから録音してください。理事会や委員会では、利用者や職員の個人に関わる話が出ることがあります。会議の冒頭で、録音すること、何に使うか、使う文字起こしサービス、録音をいつ消すかを伝え、出席者の同意を得たことを議事録の材料に残しておきます。外部の生成AIサービスに音声や文字起こしを渡す場合は、個人情報保護委員会の注意喚起にあるとおり、提供事業者が入力データを機械学習に使わないかなどを事前に確かめます。
- 現場の委員会の議事録も、理事会と同じだけ確認が必要ですか。
- 根拠になる決まりが違うので、分けて考えます。理事会と評議員会の議事録は、社会福祉法と施行規則が記載事項、署名又は記名押印、備え置きの期間まで定めています。現場の委員会の記録は、それぞれのサービスの運営基準や加算の要件、法人の規程で求められる内容に合わせます。AIに任せられる範囲は現場の委員会のほうが広く、理事会の議事録ほど人の確認の手間をかけなくてよい場面が多くなります。
まとめ|省いた時間を、記載事項と署名の確認に回す
理事会・委員会の議事録は、録音の文字起こしと要約の下書きまではAIで大きく省けます。人が残すのは、法定の記載事項がそろっているかの確認、出席者と出席の方法の確認、署名又は記名押印の手続き、最終の文言の4つです。特に、各理事の賛否と異議、特別の利害関係を有する理事、監事の意見は、要約で落ちやすいので人が確かめます。
始めるときは、現場の委員会と理事会の議事録を分けて考え、現場の委員会から試します。録音は出席者の同意を得てから始め、使うサービスと録音データの扱いを法人で先に決めておきます。
出典
- 社会福祉法(昭和26年法律第45号)第45条の11、第45条の14、第45条の15(厚生労働省 法令等データベースサービス) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82001000&dataType=0&pageNo=1(評議員会の議事録、理事会の運営と議事録の署名又は記名押印、異議をとどめない理事の賛成の推定、議事録等の備え置きと閲覧)
- 社会福祉法施行規則(昭和26年厚生省令第28号)第2条の15、第2条の17、第2条の18(厚生労働省 法令等データベースサービス) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82002000&dataType=0&pageNo=1(評議員会と理事会の議事録の記載事項、電子署名)
- 厚生労働省「社会福祉法人の機関構成と運営」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/shakai-fukushi-houjin-seido/02.html
- 厚生労働省「指導監査ガイドライン」(社会福祉法人指導監査実施要綱 別紙・改正後全文) https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000368021.pdf(理事会の議事録の着眼点、議事録への賛否の記録、指導監査での確認事項)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日) https://www.ppc.go.jp/news/press/2023/230602kouhou/(個人情報取扱事業者における注意点)
この記事は2026年10月2日時点で公開されている情報に基づいています。法令の本文は、e-Gov法令検索がメンテナンス中だったため、厚生労働省の法令等データベースサービスで確認しました。法令や通知は改正されることがあります。実際に議事録の運用を変える際は、最新の法令と自法人の定款、所轄庁の案内でご確認ください。
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最終更新:2026-10-02
