まず7項目に名前を付ける
職場環境等要件は6つの区分に分かれていて、全部で28項目あります。そのうち生産性向上のための業務改善の取組という区分に入っているのが、⑱から㉔までの7項目です。厚生労働省の資料では丸数字で書かれていますが、会議で口に出すには使いにくい番号なので、この記事ではAからGと呼びます。対応は次のとおりです。
| 呼び方 | 公式の番号と内容 |
|---|---|
| A | ⑱ 現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している |
| B | ⑲ 5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)等の実践による職場環境の整備を行っている |
| C | ⑳ 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている |
| D | ㉑ 業務支援ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入 |
| E | ㉒ 介護ロボット(見守り支援、移乗支援など)またはインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネスチャットツール含む)の導入 |
| F | ㉓ 業務内容の明確化と役割分担を行い、福祉・介護職員が支援に集中できる環境を整備。食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等について、間接支援業務に従事する者の配置や外注等で担うなど、役割の見直しやシフトの組み換え等を行う |
| G | ㉔ 各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施 |
AからGは当ブログの呼び方で、届出の書類に書く番号は丸数字のほうです。計画書や実績報告では公式の番号を使ってください。
必要な数は、算定する区分で変わる
令和8年度の報酬改定で、職場環境等要件の数え方が整理されました。厚生労働省の改定事項の資料には、次のように示されています。
| 算定するもの | 生産性向上の区分に必要な数 | 必須の項目 |
|---|---|---|
| 加算Ⅲ・Ⅳ | 2つ以上(区分ごとに1つ以上、全体から8以上) | 指定なし |
| 加算Ⅰ・Ⅱ | 3つ以上(区分ごとに2つ以上、全体から14以上) | A(⑱) |
| 令和8年度特例要件のア | 5つ以上 | A(⑱)とD(㉑) |
いちばん上の行と下の行では、同じ区分の話をしているのに必要な数が2倍以上違います。ここを取り違えると計画が丸ごとずれるので、自法人がどの行を見るべきかを先に決めてください。
いちばん下の令和8年度特例要件は、上乗せの加算につながる要件です。令和8年6月の改定では、生産性向上や協働化に取り組む事業者に対する上乗せの加算区分として加算Ⅰロ・Ⅱロが新設されました。上乗せの規模は、福祉・介護職員を対象とした月0.3万円、率にして1.0パーセント相当と示されています。特例要件は、アかイのいずれかと、ウを満たすことです。アが生産性向上に関する取組を5つ以上で、AとDが必須。イは社会福祉連携推進法人に所属していること。ウは加算Ⅱロ相当の加算額の2分の1以上を月給の改善に充てることです。
つまり、連携推進法人に入っていない単独の法人が上乗せを取りにいくなら、7項目のうち5つを埋める道しかありません。そして5つのうち2つは選べません。
自法人がどの行を見るべきか、いま何項目を実施済みと言える状態か。計画書の控えを見ながら30分で整理します。無料です。
公式LINEで相談するAとDには順番がある
必須の2つは、AとDです。どちらからでもよさそうに見えますが、Dから始めた事業所は、あとでAをやり直すことになります。
Aは現場の課題の見える化です。項目の説明には、課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等と書かれています。このうち業務時間調査は、導入の前にしか測れません。タブレットを配って記録が電子化されたあとで、紙のころは1日何分かかっていたかを思い出そうとしても、それは数字ではなく感想になります。
もう一つ実務的な理由があります。業務支援ソフトは安い買い物ではありません。どの業務がいちばん重いかを測らずに製品を選ぶと、営業資料で強調されている機能と、自分の事業所で実際に時間を食っている作業がずれます。児童発達支援で個別支援計画の作成に時間がかかっているのか、就労継続支援で工賃計算と日報の転記に時間がかかっているのかで、選ぶべきものは変わります。測ってから選べば、この判断が1回で済みます。
順番はAが先、Dが後です。そして必須ではない残りの5項目は、この2つを進める過程で自然に埋まっていきます。
A(⑱)の進め方 まず2週間測る
厚生労働省は障害福祉現場における生産性向上の基本的な考え方という資料を公開していて、取組を5つのステップで示しています。共感をつくる、課題を見える化する、解決策を考える、試してみる、振り返るの5つです。2つめのステップである課題の見える化については、現状の把握を2つの視点で行うとされています。数値からわかること、たとえば記録にかかる時間や残業時間。そして職員や利用者の声や体験からわかること、たとえば負担を感じる場面や困りごとです。
この考え方を、事業所で今週から回せる形にすると次のようになります。
- 測る業務を3つから5つに絞る。記録の入力、申し送り、請求のための転記、個別支援計画の作成、保護者や関係機関への連絡のうちから、重いと感じているものを選ぶ。
- 測る人を3名決める。全員に測らせると続きません。常勤の支援員、サビ管または児発管、事務の3名で十分です。
- 始めた時刻と終えた時刻をメモしてもらう。専用のアプリは要りません。紙1枚か、共有のスプレッドシート1枚で足ります。
- 2週間続けて、業務ごとの1日平均を出す。
- あわせて、負担を感じる場面を職員から聞き取る。数字だけでは、なぜ時間がかかっているかが出てこないためです。
資料には、課題を原因、結果、悪影響といった視点で分類し、つながりを構造化して考えることが有効だと書かれています。これが項目に書かれている課題の構造化にあたります。厚生労働省が紹介している事例では、有給休暇の取得日数が少ないという状況について職員に聞き取ったところ、多忙であることだけでなく、休暇申請がすべて紙様式で決裁手続に時間がかかっていることも原因だと分かった、というものが挙げられています。時間を測るだけでは出てこず、聞き取るだけでも出てこない類の答えです。
2週間分の表と、聞き取りのメモ。この2つが揃えば、Aは実施したと言える状態になります。かかる費用はゼロです。
D(㉑)の進め方 括弧の中を読む
Dの項目には、見落とされやすい但し書きがあります。業務支援ソフトの説明に、記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの、と括弧書きが付いている点です。記録ソフトを入れていても、そこから請求ソフトへ手で打ち直しているのであれば、括弧の中の条件をどう読むかという問題が残ります。
製品を比べるときは、機能の一覧ではなく、自分の事業所の転記が消えるかどうかで見てください。確認する質問は3つで足ります。支援記録から請求データへの受け渡しに人の入力が入るか。個別支援計画やモニタリングの様式が自分の事業所の書式で出せるか。国保連への請求まで同じ製品の中で完結するか、別の製品との連携が必要か。
情報端末のほうは、タブレット端末やスマートフォン端末等と書かれています。ソフトと端末の両方を書ける事業所であれば、実績報告にもそのまま書けます。なお、導入にあたって費用の補助を検討するなら、補助金の要綱と加算の要件は別物です。補助金の側の段取りは障害福祉のテクノロジー導入補助と記録ソフトは補助金の対象になるかにまとめています。
測る業務の選び方と、2週間分の記入様式をお渡しします。製品選びの前の段階で使うものです。
公式LINEで相談する残り5つは、AとDの途中で埋まる
特例要件を狙う場合、あと3つ必要です。ゼロから新しい取組を立ち上げる必要はありません。AとDを進めていれば、次のように手が届きます。
- C(⑳ 業務手順書と様式の工夫)。業務支援ソフトを入れると、入力の手順を書いた紙を必ず作ることになります。それが業務手順書です。記録様式を見直すのも、導入のタイミングがいちばん通しやすい。
- E(㉒ インカムやビジネスチャット)。職員間の連絡調整を速くする機器が対象で、ビジネスチャットツールが明記されています。端末を配るのと同時に検討できます。
- F(㉓ 役割分担の見直し)。2週間の業務時間調査で、支援職員が支援以外に使っている時間が数字で出ます。清掃や準備、片付けをどう配分し直すかは、その数字を見てから決めるほうが決めやすい。
- B(⑲ 5S活動)。備品や書類の置き場を整えるところからで、費用はかかりません。ただし単体で始めると後回しになりがちなので、書類の電子化と同じ時期にやるのが現実的です。
- G(㉔ 協働化)。委員会の共同設置や物品の共同購入、ICTインフラの共同整備などです。複数事業所を持つ法人や、近隣の法人と付き合いのある事業所では、すでに実態があるのに書いていないだけ、という場合があります。
実態があるのに書いていないというのは、実はよくあります。計画書を作る前に、この7項目を持って現場の会議に出て、心当たりがあるものを挙げてもらうだけで2つか3つ見つかることがあります。
誓約で出せるが、実績報告で確認される
改定資料には、要件の整備に一定の期間を要することから、令和8年度中の対応の誓約で可とし、実績報告書により確認することとしたうえで、未対応が確認された場合には加算額の一部または全部を返還させることとする、と書かれています。特例要件のアとウについても同じ扱いです。
誓約は、締切が年度末まで延びたということであって、やらなくてよいという意味ではありません。返還という言葉が資料に明記されている以上、年度末に実施できていない項目が残ると、入ってきた加算を戻す話になります。職員に配分したあとで戻すのは、経理の問題である以上に、説明の問題になります。
もう一つ、加算Ⅰ・Ⅱについては、情報公表システム等で職場環境等要件の各項目ごとの具体的な取組内容の公表を求めるとされています。丸を付けるだけでなく、何をどう実施したかを書いて外に出す前提です。実施した月、関わった職員、測った数字をその都度メモに残しておけば、公表用の文章も実績報告もそこから書けます。処遇改善加算の書類づくりそのものを軽くする手順は処遇改善加算の計画書・実績報告をAIで軽くする手順にまとめました。
相談先は県ごとに用意されている
厚生労働省は、障害福祉分野の生産性向上について都道府県ごとのサポートセンターをワンストップ窓口として整理しています。機器の選び方や進め方の相談先として使えます。あわせて、障害福祉現場における介護テクノロジー等導入・活用マニュアルも公開されていて、業務の見える化から改善の検討までの進め方が示されています。要件の解釈そのものについては、加算の届出先である都道府県や市町村の障害福祉担当課が窓口になります。
よくある質問
- 生産性向上の要件は、いくつ取り組めばよいのですか。
- 算定する加算の区分によって数が変わります。厚生労働省の令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項によると、福祉・介護職員等処遇改善加算Ⅲ・Ⅳは職場環境等要件の区分ごとに1つ以上で、生産性向上の区分だけは2つ以上、全体から8以上です。加算Ⅰ・Ⅱは区分ごとに2つ以上で、生産性向上の区分だけは3つ以上、そのうち現場の課題の見える化は必須、全体から14以上です。さらに上乗せの加算Ⅰロ・Ⅱロにつながる令和8年度特例要件では、生産性向上に関する取組を5つ以上、うち現場の課題の見える化と業務支援ソフト・情報端末の導入が必須とされています。
- 必須とされている2つは、具体的にどの項目ですか。
- 職場環境等要件の番号でいうと⑱と㉑です。⑱は現場の課題の見える化で、課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等と示されています。㉑は業務支援ソフト、記録・情報共有・請求業務の転記が不要なものと、タブレット端末やスマートフォン端末などの情報端末の導入です。この2つが必須とされるのは令和8年度特例要件で、加算Ⅰ・Ⅱの通常の要件で必須とされているのは⑱のみです。
- 業務支援ソフトを入れていれば、⑱の見える化も満たしたことになりますか。
- 別の項目なので、ソフトを導入しただけでは⑱を実施したことにはなりません。⑱に示されているのは課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等です。厚生労働省の障害福祉現場における生産性向上の基本的な考え方では、現状の把握を数値からわかること、たとえば記録にかかる時間や残業時間と、職員や利用者の声からわかることの2つの視点で行い、あるべき姿とのギャップを構造的に整理する進め方が示されています。ソフトの導入は㉑として別に数えられます。
- 年度内に間に合わない場合はどうなりますか。
- 改定資料では、要件の整備に一定の期間を要することから、令和8年度中の対応の誓約で可とし、実績報告書により確認することとされています。そのうえで、未対応が確認された場合には加算額の一部または全部を返還させることとすると明記されています。誓約は締切の延長であって免除ではないため、実績報告で説明できる記録を残しながら進める必要があります。
- 取り組んだ内容は外部に公表されるのですか。
- 改定資料には、加算Ⅰ・Ⅱにおいては情報公表システム等で職場環境等要件の各項目ごとの具体的な取組内容の公表を求めると記載されています。項目に丸を付けるだけでなく、何をどう実施したかを書いて外に出す前提になります。実施した月、参加した職員、測った数字を残しておくと、公表用の文章も実績報告もそこから書けます。
- 何から手を付けるのが早いですか。
- ⑱の業務時間調査からです。特別な機材も予算も要らず、記録や申し送り、請求のための転記にかかっている時間を2週間測るだけで始められます。しかもこの数字は、㉑で業務支援ソフトを選ぶときの判断材料になり、導入後の効果を書く材料にもなります。先に機器を選ぶと、比べる前の数字が手元に残りません。
まとめ
生産性向上の区分は7項目です。加算Ⅲ・Ⅳなら2つ以上、加算Ⅰ・Ⅱなら3つ以上でAが必須、上乗せにつながる令和8年度特例要件なら5つ以上でAとDが必須。自法人がどの行を見るのかを最初に決めることが、この要件でいちばん大きい分かれ目になります。
そのうえで、必須の2つには順番があります。Aの業務時間調査は導入の前にしか測れず、Dの製品選びはその数字がないと勘で決めることになります。逆に言えば、2週間の表を作るところまでは、今週からでも、予算ゼロでも始められます。この2週間があるかないかで、年度末の実績報告に書ける文章の中身が変わります。
出典
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70634.html
- 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(令和8年2月18日 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001658029.pdf(職場環境等要件の28項目と6区分、加算Ⅲ・Ⅳは区分ごとに1つ以上で生産性向上は2つ以上かつ全体から8以上、加算Ⅰ・Ⅱは区分ごとに2つ以上で生産性向上は3つ以上うち⑱必須かつ全体から14以上、令和8年度特例要件のア・イ・ウと生産性向上5つ以上で⑱㉑必須、加算Ⅰロ・Ⅱロの新設と令和8年6月施行、令和8年度中の対応の誓約と実績報告書による確認および返還、加算Ⅰ・Ⅱにおける情報公表システム等での取組内容の公表)
- 厚生労働省「令和8年度の障害福祉人材の処遇改善等の対応」https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001657650.pdf(大臣折衝事項、障害福祉従事者を対象とした月1.0万円相当の賃上げ、生産性向上や協働化に取り組む事業者への月0.3万円相当の上乗せ、改定率プラス1.84パーセント)
- 厚生労働省「障害福祉現場における生産性向上の基本的な考え方」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/seisansei/kihonteki_kangaekata_00001.html(5つのステップ、現状把握の定量と定性の2視点、課題の構造化、職員への聞き取りによる原因把握の事例)
- 厚生労働省「障害福祉分野における生産性向上・手続負担軽減」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/seisansei/index.html
- 厚生労働省「障害福祉分野における都道府県サポートセンター(ワンストップ窓口)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/seisansei/support_center.html
- 厚生労働省「障害福祉現場における介護テクノロジー等導入・活用マニュアル」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/seisansei/donyu_manual.html
この記事は2026年9月22日時点で公開されている情報に基づいています。AからGという呼び方は本記事の整理で、届出の書類では厚生労働省の丸数字の番号を使ってください。要件の解釈や添付書類の扱いは自治体によって運用が異なることがあるため、実際の届出は必ず所管の自治体の通知と担当課でご確認ください。今後、国から追加のQ&Aが示された場合は、内容を確認のうえ本記事を更新します。
7項目のうち、いま何個が埋まっているかを一緒に数えます
サービス種別、事業所の数、使っている記録ソフト、算定している加算の区分をお知らせいただければ、どの行の要件を見るべきか、実態はあるのに書けていない項目はどれか、AとDを年度内に終えるならいつ何をするかを1枚にしてお返しします。届出そのものは御法人と自治体のやり取りになります。
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