生成AIは介護テクノロジーの補助の対象になるのか
答えは、県と製品によります。理由は、この補助の対象が、技術の種類ではなく品目で決められているからです。
厚生労働省の事業概要では、補助の対象として、介護テクノロジー利用の重点分野に該当する介護ロボット、介護ソフトやタブレット端末、インカム、クラウドサービス、転記が発生しない環境ができている場合のバックオフィスソフトなどが挙げられています。見守り機器などを連動させて入れるパッケージ型の導入も対象です。この資料の中に、生成AIという言葉は出てきません。
実際に申請を受け付けるのは都道府県で、対象の決め方は県ごとに違います。令和8年度の2つの県を見比べると、違いがよく分かります。
埼玉県の実施要領は、公益財団法人テクノエイド協会の福祉用具情報システム(TAIS)で介護テクノロジーとして選定された機器等を対象としています。県のQ&Aには、選定されていない機器等は補助対象とならないと書かれています。
大阪府の交付要綱も、TAISで選定された機器等を対象の中心に置いています。そのうえで、その他という区分があり、TAISに載っていなくても同水準と知事が判断した機器等や、間接業務時間の削減などに有効と知事が判断した機器等も対象になり得ます。要綱が例として挙げているのは、電子サイン、給与、勤怠管理などのバックオフィスソフトです。
どちらの資料にも、生成AIを対象とする記載も、対象外とする記載も見当たりませんでした。つまり、生成AIの機能を持つ製品が対象になるかは、その製品がTAISで選定されているか、要綱の介護ソフトの定義に当たるか、県がその他として認めるかで決まります。ここを飛ばして、対象になるはずだという前提で予算を組むのは避けてください。
対象かどうかは、どの順番で確かめればいいのか
次の5つを、上から順に確かめます。順番に意味があります。上の段で答えが出れば、下の段は要りません。
- 事業所がある都道府県の、今年度の要綱とQ&Aを開く。読むのは補助対象経費の条文です。前年度の資料や他県の資料で判断しないでください。
- 入れたい製品が、TAISで介護テクノロジーとして選定されているかを調べる。TAISには選定を受けていない機器も載っているので、載っているかどうかではなく、選定されているかを見ます。
- 介護ソフトとして申請するなら、記録、情報共有、請求を一気通貫で行えるという要件を満たすかを確かめる。
- TAISで選定されていない製品なら、県の要綱にその他の区分があるか、あるならどんな例が挙げられているかを読む。
- それでも判断がつかなければ、県の担当課か県が案内する窓口に、製品の資料を添えて問い合わせる。回答は日付と部署名と一緒に残します。
| 確かめること | 見る資料 | 分かること |
|---|---|---|
| 1. 県の今年度の対象経費 | 都道府県の交付要綱、実施要領、Q&A | 対象が何を基準に決められているか |
| 2. 製品の選定の有無 | 福祉用具情報システム(TAIS)の介護テクノロジーの検索 | その製品が選定されているか、どの分野か |
| 3. 介護ソフトの要件 | 要綱の介護ソフトの定義、厚生労働省の介護ソフトの機能調査結果 | 一気通貫の要件を満たすか |
| 4. その他の区分 | 要綱のその他の条文と例、Q&A | 選定外の製品に道があるか |
| 5. 県の回答 | 担当課や窓口への問い合わせ | その製品を申請できるか、どの区分か |
3つめについて補足します。埼玉県の実施要領は、介護ソフトを、記録業務、情報共有業務、請求業務を一気通貫で行えるもので、転記が発生しないものとしています。すでに入っている介護ソフトと組み合わせて一気通貫が実現できていれば対象とする、とも書かれています。大阪府のQ&Aでは、記録機能だけ、請求機能だけのソフトを単体で申請する場合は対象外とされ、TAISで介護業務支援として掲載されていても対象にならないと明記されています。AIの機能があるかどうかより前に、この要件で外れる製品があるということです。
5つめの問い合わせは、ベンダーに任せず法人から行うことをおすすめします。ベンダーが対象ですと説明していても、他県の扱いや前年度の扱いを指していることがあります。都道府県ごとの窓口と募集の状況は全国の福祉DX・介護テクノロジー補助金ガイド(都道府県一覧)から県別のページにつないでいます。
理事会で説明する1枚、職員向けの生成AI利用ルール、導入前チェックリストの3点を、公式LINEでお渡ししています。
資料セットを受け取る生成AIの入り方によって、見るところはどう変わるのか
生成AIを入れたいという話は、実際には4つの形のどれかです。形によって、要綱の見るところが変わります。下の表は、どこを確かめるかを整理したもので、対象になるかどうかの判定ではありません。
| 生成AIの入り方 | 確かめるところ | 要綱やQ&Aの記載 |
|---|---|---|
| 介護ソフトに組み込まれた機能として使う | その介護ソフトが一気通貫の要件を満たし、TAISで選定されているか | 埼玉県の実施要領は、TAISで介護業務支援に該当する介護ソフトを対象経費の種類の1つとしている |
| 記録の入力を助ける単体の製品として入れる | TAISで選定されているか、単体で申請できる区分があるか | 大阪府のQ&Aは、記録機能のみのソフトの単体申請を対象外としている |
| 汎用の生成AIサービスを法人で契約する | TAISで選定されているか、その他の区分に当たるかを県に聞く | 埼玉県のQ&Aは、TAISで選定されていない機器等を対象外としている |
| 自法人向けの仕組みを作ってもらう | 開発の費用が対象経費に入るか | 埼玉県の実施要領は、販売価格が公表され一般に購入できる機器等が対象で、開発に要する経費は対象にならないとしている |
大阪府のQ&Aには、一気通貫の介護ソフトとあわせてタブレット入力型の記録システムを入れる場合の扱いも載っています。記録システムは単体では介護ソフトに当たらず、申請の区分は介護業務支援のうち介護ソフトとインカム以外となり、補助上限額は30万円とされています。同じ記録を助ける製品でも、どの区分で申請するかで上限が変わるので、見積りを取る前に区分を確かめてください。
重点分野の定義にも目を通しておくと、県と話がしやすくなります。厚生労働省と経済産業省は令和6年6月に重点分野を改訂し、2025年4月から9分野16項目で運用しています。このうち介護業務支援は、介護業務に伴う情報を集めて蓄え、リスクの予測や検知、ケアの推奨や各種ケア計画の作成、職員の教育や研修、記録や職員間のコミュニケーションなどに生かす機器やシステムと定義されています。定義に生成AIという言葉はありませんが、入れたい製品がこの定義のどの業務を支えるのかを説明できるようにしておくと、問い合わせの答えが早く返ってきます。
補助で入れる仕組みと生成AIは、計画の中でどうつなげるのか
ここからが本題です。生成AIが補助の対象にならなくても、補助と生成AIは業務改善計画の中でつなげられます。考え方は、補助で土台を入れ、生成AIは土台の上の使い方として法人の負担で足す、というものです。
この補助は、機器を買うための補助である前に、業務改善の計画に対する補助です。埼玉県の実施要領では、補助を受ける事業所は業務改善計画を作って県に出し、補助を受けた翌年度から3年間、計画に対する効果を報告することとされています。コンサルティング会社等か県の相談センター等による業務改善の支援を受けることや、入所、泊まり、居住系のサービスでは利用者の安全と職員の負担軽減を検討する委員会を置くことも要件です。
つまり、計画書に書くのは、何を買うかではなく、どの業務をどう変えるかです。そこに生成AIを書き込む余地があります。
| 変えたい業務 | 補助で入れる土台 | 生成AIの使いどころ | 効果として測るもの |
|---|---|---|---|
| 日々の記録 | 介護ソフト、タブレット端末、通信環境 | 記録の文章の言い回しを整える | 記録にかかる時間 |
| 申し送り | 介護ソフト、インカム | 記録から申し送りの要点をまとめる下書き | 申し送りにかかる時間 |
| 委員会や会議 | 情報共有の仕組み | 議事録の下書き、資料の要約 | 議事録の作成にかかる時間 |
| 研修や手順書 | 情報共有の仕組み | マニュアルや研修資料のたたき台 | 資料の作成にかかる時間 |
つなげるときに守ることが3つあります。
1つめは、経費を混ぜないことです。補助を申請する経費と、法人の負担で入れる生成AIの費用は、計画書でも見積りでも分けて書きます。対象かどうか確かめていない費用を、対象の機器の見積りに含めてはいけません。
2つめは、記録が先、生成AIは後という順番です。生成AIが役に立つのは、記録が電子で残り、転記なしで取り出せるようになってからです。紙と手書きが残ったまま生成AIを入れても、入力する手間が増えるだけになります。補助で入れる仕組みは、この前提を作るものと考えてください。
3つめは、利用者の情報の扱いを先に決めることです。埼玉県の実施要領は、補助の要件として、独立行政法人情報処理推進機構のSECURITY ACTIONの宣言と、個人情報保護の観点から十分なセキュリティ対策を講じることを求めています。生成AIに何を入れてよいかを決めていない状態は、この要件の趣旨とも合いません。入れてはいけない情報の線の引き方は社会福祉法人がChatGPTに入れてはいけない情報の一覧にまとめています。委員会での話し合い方は生産性向上委員会で生成AIをどう話し合うかが参考になります。
理事会では、何を決めておけばいいのか
決裁する立場で決めておくことは、製品ではなく次の5点です。
- 補助を申請する経費と、法人の負担で入れる経費を分けて起案する。
- 生成AIが対象外だった場合に、法人の負担でも入れるか、見送るかを先に決める。
- 交付決定の前に契約や購入をしない。埼玉県のQ&Aでは、交付決定日より前に購入したものは補助対象外とされています。
- 他の補助金と対象が重ならないようにする。扱いは県で違います。埼玉県の実施要領は他の補助金等で助成されていないことを要件としています。大阪府のQ&Aは、デジタル化・AI導入補助金2026などについて、機器の種別が異なる場合は受けられるとしています。
- 補助を受けた後の報告を誰が担うかを決める。効果の報告が複数年続く県があります。
2点めは、後回しにされがちです。対象になるなら入れる、ならないなら入れない、という決め方をすると、その生成AIは法人にとって必要なものではなかったことになります。補助は、入れると決めたものの負担を軽くする手段として扱うほうが、導入後に使われ続けます。
申請の準備は、募集が始まってからでは間に合わないことがあります。大阪府の令和8年度の事前エントリーは令和8年7月13日に締め切られました。来年度に向けて整えることは来年度の介護テクノロジー補助金に間に合わせるために、いま整える3つに、採択された後に止まらないための準備は介護テクノロジー補助金は採択後に止まるに書いています。介護ソフトそのものの扱いは介護記録ソフトは補助金の対象になるかをご覧ください。
なお、補助金の申請書の作成と提出は、法人ご自身で行うか、行政書士にご依頼ください。当社は申請書の作成や提出の代行は行っていません。当社がお手伝いするのは、生成AIを業務のどこで使うかを決め、職員に定着させるところです。
よくある質問
- 生成AIは介護テクノロジー導入支援事業の補助の対象ですか。
- 全国で一律に対象とも対象外とも言えません。今回確認した厚生労働省の事業概要と、埼玉県と大阪府の令和8年度の要綱やQ&Aには、生成AIという品目の記載は見当たりませんでした。対象になるかは、その製品が福祉用具情報システム(TAIS)で介護テクノロジーとして選定されているか、要綱の介護ソフトの定義に当たるか、県がその他の区分として認めるかで決まります。所管の都道府県の今年度の要綱で確かめてください。
- ChatGPTなど汎用の生成AIの月額料金は、補助の対象になりますか。
- 要綱に書かれていないので、この記事では断定できません。埼玉県の令和8年度のQ&Aでは、TAISで介護テクノロジーとして選定されていない機器等は補助対象とならないとされています。大阪府の令和8年度の交付要綱には、知事が判断するその他の区分がありますが、例として挙げられているのは電子サイン、給与、勤怠管理などのバックオフィスソフトです。契約する前に、所管の都道府県に製品の資料を添えて確かめてください。
- ベンダーから補助の対象だと言われました。そのまま申請してよいですか。
- 申請の前に、法人から県に確かめることをおすすめします。対象の決め方は都道府県と年度で違い、ベンダーの説明が他県や前年度の扱いを指していることがあります。その製品がTAISで介護テクノロジーとして選定されているか、どの区分で申請するのかを、県の今年度の要綱とQ&Aで確認し、判断がつかなければ担当課や窓口に問い合わせて、回答を日付と部署名と一緒に残してください。
- 対象外だった場合、生成AIは入れないほうがよいですか。
- 補助の対象かどうかと、法人に必要かどうかは別の話です。補助で入れる介護ソフトや通信環境は、記録を電子で残し、転記なしで取り出せるようにする土台になります。生成AIはその土台の上で、申し送りの要点の下書きや議事録の下書きなどに使えます。法人の負担で入れる場合は、補助を申請する経費と分けて起案し、業務改善計画の中で、どの業務の時間を減らすために使うのかを書いておくとつながります。
- 補助金の申請書は、合同会社サンに作ってもらえますか。
- 当社は申請書の作成や提出の代行は行っていません。申請書の作成と提出は、法人ご自身で行うか、行政書士にご依頼ください。当社がお手伝いするのは、生成AIを業務のどこで使うかを決めること、職員向けの利用ルールを整えること、導入した後に職員に定着させることです。
まとめ|対象かどうかより先に、順番と分け方を決める
生成AIが補助の対象になるかは、都道府県の要綱と製品の扱いで決まります。確かめる順番は、県の今年度の要綱、TAISでの選定、介護ソフトの要件、その他の区分、県への問い合わせの5つです。
対象にならなかったとしても、補助で入れる記録と情報連携の仕組みは、生成AIを使うための土台になります。経費を分け、記録を先に整え、利用者の情報の扱いを決める。この3つを業務改善計画の中に書いておけば、補助と生成AIは無理なくつながります。
出典
- 厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」 https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-ict.html(介護テクノロジーの導入に関する補助、介護ソフトの機能調査結果)
- 厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分))」ほか事業概要の資料 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001478274.pdf(補助対象、補助要件。令和7年度当初予算と令和6年度補正予算の説明資料)
- 厚生労働省「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂しました(令和6年6月) https://www.mhlw.go.jp/stf/juutenbunya_r6kaitei_00001.html(名称の変更、9分野16項目、2025年4月からの運用)
- 厚生労働省・経済産業省「介護テクノロジー利用の重点分野定義」 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001268136.pdf(介護業務支援の定義)
- 公益財団法人テクノエイド協会「福祉用具情報システム(TAIS)介護テクノロジー」 https://www.techno-tais.jp/ServiceWelfareGoodsList.php(介護テクノロジーとして選定された製品の検索)
- 埼玉県「埼玉県介護テクノロジー定着支援事業費補助金実施要領(令和8年6月30日施行)」 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/268999/r8youryou.pdf(補助対象経費、介護ソフトの定義、補助要件、業務改善計画と効果の報告、開発に要する経費の扱い)
- 埼玉県「令和8年度埼玉県介護テクノロジー定着支援事業費補助金に係るQ&A(令和8年6月23日現在)」 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/268999/q-a-r8.pdf(TAISで選定されていない機器等の扱い、交付決定日以降の購入)
- 大阪府「令和8年度大阪府介護テクノロジー導入支援事業補助金」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o090100/koreishisetsu/kaigo_technology/tech.html(事前エントリーの締切、交付要綱とQ&Aの掲載)
- 大阪府「令和8年度大阪府介護テクノロジー導入支援事業補助金交付要綱」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/106656/20260810youkou.pdf(補助対象、その他の区分と例)
- 大阪府「令和8年度大阪府介護テクノロジー導入支援事業Q&A(令和8年7月3日版)」 https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/106656/20260703qa.pdf(他の補助金との関係、記録機能のみのソフトの扱い、タブレット入力型の記録システムの区分と補助上限額)
この記事は2026年10月4日時点で公開されている情報に基づいています。確認したのは厚生労働省の資料と、埼玉県と大阪府の令和8年度の要綱やQ&Aです。他の都道府県の扱いや、来年度の要綱の内容は確認していません。補助の対象、補助率、上限額、締切は都道府県と年度によって異なります。申請の前に、所管の都道府県の最新の要綱と担当課でご確認ください。
理事会に持っていける資料セットをお渡しします
理事会で説明する1枚、職員向けの生成AI利用ルール、導入前チェックリストの3点をまとめた資料セットを、公式LINEでお渡しします。補助で入れる仕組みと生成AIの費用を分けて起案するときの、説明の土台として使えます。御法人の名前と規程に置き換えて使える形にしてあります。
▶ 公式LINEで資料セットを受け取るLINEをお使いでない場合は メールでのお問い合わせでも承ります
最終更新:2026-10-04
