生産性向上推進体制加算は、何をすれば算定できるのか
生産性向上推進体制加算は、令和6年度の介護報酬改定で新しくできた加算です。見守り機器などのテクノロジーを入れたあとも、委員会で安全とケアの質と職員の負担を確かめながら業務改善を続け、その効果をデータで国に報告することを評価します。対象は施設系、居住系、短期入所系、多機能系のサービスで、実績報告の様式には、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護などが並んでいます。
区分は(I)と(II)の2つです。厚生労働省の解説資料「令和6年度介護報酬改定 生産性向上推進体制加算について」(R8.3更新)をもとに、要件を並べると次のとおりです。
| 項目 | 加算(II) | 加算(I) |
|---|---|---|
| 単位数 | 10単位/月 | 100単位/月 |
| 委員会 | 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会を三月に一回以上開催し、必要な安全対策を講じる。加算を取る場合は、基準省令の経過措置期間中でも委員会の設置が必要 | |
| 業務改善 | 生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行う | |
| テクノロジー | 見守り機器、インカム等、介護記録ソフト等のうち1つ以上(見守り機器は1つの居室への導入でも可) | 3つすべて(見守り機器はすべての居室への導入が必要。利用者や家族の意向で使用を止める運用は可能) |
| 成果の確認 | 要件なし | 取組を3か月以上続けたうえで、導入前後を比較して成果を確かめる |
| 役割分担 | 要件なし | 業務内容の明確化や見直し等、職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)を行う |
| 実績報告 | 1年に1回、項目1から3を報告 | 1年に1回、項目1から5を報告 |
委員会で検討する事項は、利用者の安全及びケアの質の確保、従業者の負担の軽減及び勤務状況への配慮、介護機器の定期的な点検、職員に対する研修、の4つとされています。委員会の議題の立て方と議事録の型は、生産性向上委員会で生成AIをどう話し合うかに書いています。この記事では、その委員会を含めた加算全体の仕事と、年1回の実績報告を中心に扱います。
生成AIを入れれば加算が取れるのか
取れません。厚生労働省の解説資料で導入が必要とされているテクノロジーは、次の3つの区分です。
- 見守り機器:利用者がベッドから離れようとしている状態や離れたことを感知できるセンサーで、外部通信機能により職員に通報できるもの
- 職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器:インカムやビジネス用のチャットツールなど。同じ時間帯に勤務するすべての介護職員の使用が必要
- 介護記録作成の効率化に資するICT機器:介護記録ソフト等で、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る
どの区分にも、生成AIを入れれば要件を満たすという書き方はありません。生成AIの機能が付いた記録ソフトもありますが、要件を満たすかどうかは、上の区分に当てはまるかで判断されます。迷うときは、導入の前に指定権者(都道府県や市の介護保険の担当課)に確かめてください。
では生成AIに役目がないかというと、そうではありません。この加算は、機器を入れて終わりではなく、三月に一回の委員会、職員へのアンケートや聞き取り、機器の点検の記録、職員研修、年1回のデータ集計と報告が続きます。この事務の手間が重いと、委員会は形だけになり、報告は締切前の数日に事務長1人が抱えることになります。生成AIを使うのは、この事務の部分です。
加算のどの仕事に手間がかかり、生成AIはどこで使えるのか
加算に伴う仕事を、厚生労働省の解説資料の項目に沿って並べ、生成AIに任せられる部分と、人が必ずやる部分を分けました。生成AIの出力はすべて下書きで、確定するのは人です。
| 加算の仕事 | 資料で求められていること | 生成AIに頼めること | 人が必ずやること |
|---|---|---|---|
| 委員会の準備と記録 | 三月に一回以上開催し、4つの事項の実施状況を確認する | 議題案と前回の宿題の一覧の下書き、固有名を置き換えたメモからの議事録の下書き | 決定事項・担当・期限が事実と合っているかの確認、委員長の確定 |
| 職員の負担の確認 | アンケートや聞き取りで、心身の負担、負担が集中する時間帯、休憩や時間外勤務の状況を確かめる | アンケートの設問案、自由記述を個人が分からない形にしたうえでの要約 | 回答の回収と個人を特定できる情報の管理、結果を人員配置や処遇の検討につなぐ判断 |
| 機器の点検 | 時間を決めて不具合を確認する仕組み、メーカー等と連携した定期点検 | 点検表の様式案、メーカーの取扱説明書を読んで点検項目を抜き出す作業 | 実際の点検と記録、不具合時の連絡 |
| 職員研修 | 機器の使い方、ヒヤリ・ハット事例の周知、再発防止策の研修を定期的に行う | 研修資料と確認テストの下書き、事例を匿名にしたうえでの振り返りシートの下書き | 内容の正しさの確認、研修の実施と記録 |
| 実績報告のデータ | 10月の総業務時間と超過勤務時間、11月から10月の年休取得日数などを集計して報告する | 集計表の作り方や平均の出し方の説明、報告までの手順書の下書き | 勤務記録からの集計、数字の確認、システムへの入力と提出 |
表の右から2列目を見ると分かるとおり、生成AIに頼めるのは、様式、下書き、要約、手順書といった、白紙から作るのに時間がかかる仕事です。勤務時間や利用者の調査の回答といった数字そのものは、生成AIに入れずに表計算ソフトで扱います。職員の勤務時間や休暇の日数は個人に結びつく情報で、利用者の調査は利用者本人の回答だからです。入れてはいけない情報の一覧は社会福祉法人がChatGPTに入れてはいけない情報の一覧にまとめています。
御施設の加算の仕事のうち、どこに時間がかかっているかを一緒に洗い出し、生成AIに任せられる部分と任せない部分を分けた手順書づくりをお手伝いできます。
公式LINEで相談する実績報告は、いつ、何を、どこから出すのか
実績報告は、加算を算定している事業所が事業年度ごとに1回、厚生労働省に出すものです。加算(II)は項目1から3、加算(I)は項目1から5を報告します。
| 項目 | 調べること | 対象と期間 | 対象の区分 |
|---|---|---|---|
| 1 利用者の満足度等の評価 | WHO-5調査、利用者の認知機能の変化に関する調査(生活・認知機能尺度) | それぞれ5名程度の利用者(5名に満たない場合は対象となる利用者の最大数)。実施時期は任意 | (I)(II) |
| 2 業務時間と超過勤務時間 | 介護職員の1月当たりの総業務時間と残業時間 | 対象事業年度の10月。すべての介護職員((II)は機器を使ったフロア等に勤務する介護職員)。算定初年度は算定を開始した月 | (I)(II) |
| 3 年次有給休暇の取得状況 | 年次有給休暇の取得日数 | 対象事業年度の10月を基準に直近1年間(11月から10月)。対象者は項目2と同じ | (I)(II) |
| 4 介護職員の心理的負担等 | SRS-18調査、仕事のやりがいと職場の活気の変化 | 対象者は項目2と同じ。実施時期は任意 | (I)のみ |
| 5 業務時間の内訳 | 5日間のタイムスタディ調査(直接介護、間接業務、余裕時間、休憩・待機・その他) | 日中と夜間それぞれ複数人の介護職員。実施時期は任意 | (I)のみ |
調査の実施にあたっては、介護職員や利用者等に説明を行い、同意を得ることとされています。同意が得られない人は調査の対象にしません。
出し方と期限
報告は、厚生労働省の生産性向上推進体制加算実績報告システムからオンラインで行います。ログインは、GビズIDのプライムIDまたはメンバーID、または電子請求受付システム(介護)のIDを使います。厚生労働省の資料のよくある質問では、GビズIDのエントリーIDではログインできないとされています。提出期限は、京都市の案内で各事業年度の末日までとされています。報告日と報告年度は、現在の日付と年度を入れます。添付資料は通常不要です。
ここで押さえておきたいのは、総業務時間と超過勤務時間の対象月が10月だということです。10月の勤務記録から、介護職員1人ずつの1か月の総業務時間と超過勤務時間を出し、その平均を報告します。年次有給休暇も11月から10月の1年間で数えます。つまり、10月が終われば報告に必要な数字の多くはそろい、あとは年度末までにシステムに入れるだけ、という段取りが組めます。実際の期限と手順は、指定権者の案内と厚生労働省の通知で確かめてください。
事務長の段取りの例
| 時期 | やること | 生成AIの使いどころ |
|---|---|---|
| 10月に入る前 | 対象となる介護職員の範囲を決める。勤務記録から総業務時間と超過勤務時間を出す方法を決める。WHO-5などを実施していなければ時期を決める | 集計の手順書と、職員・利用者への説明文の下書き |
| 10月 | 通常どおり勤務記録をつける | なし |
| 11月 | 10月分の総業務時間と超過勤務時間の平均、11月から10月の年休取得日数の平均を出す | 表計算ソフトの計算式の作り方を、氏名を含まない形で聞く |
| 12月から翌年1月 | 数字を委員会で共有し、前年と比べて気になる点を話し合う。GビズIDのログインを確かめる | 委員会資料の下書き |
| 年度末まで | 実績報告システムに入力して提出する。提出した内容の控えを保存する | 次年度に向けた手順書の見直し |
この表は1つの例です。算定初年度は対象月が変わるなど、施設ごとに事情が違うので、御施設の算定開始月と指定権者の案内に合わせて組み直してください。
加算(II)から(I)に上げるとき、何を確かめるのか
加算(I)の算定を始めるには、加算(II)で求める介護機器を入れたあと、生産性向上の取組を3か月以上続け、導入の前後を比べて成果を確かめたうえで届け出る必要があります。確かめる項目は、利用者の満足度等の変化(WHO-5等)、総業務時間と超過勤務時間の変化、年次有給休暇の取得状況の変化です。成果の確認のための調査は、年1回の報告とは別に行うことができます。加算(II)を取らずに、最初から(I)を算定することも可能です。
ここでも生成AIの出番は、比較表の様式づくりと、委員会や理事会に出す説明資料の下書きです。導入前のデータがなければ比べられないので、機器を入れる前に何を測っておくかを先に決めることのほうが大切です。機器の導入費用に使える補助の考え方は介護テクノロジーの補助金の記事で扱っています。
施設長と事務長は、法人として何を決めておけばいいのか
加算の仕事に生成AIを使うなら、現場任せにせず、次の4つを法人として先に決めておきます。
- 加算の事務の担当者:委員会の事務局と、実績報告の集計と提出を誰が持つか。1人に寄せず、手順書で引き継げる形にする
- データの置き場所:勤務記録から集計した表、調査の回答、提出の控えをどこに保存するか
- 生成AIに入れてよい範囲:職員の勤務時間や休暇の日数、利用者の調査の回答は入れない。様式、手順書、固有名を置き換えた議事録の下書きは使ってよい、という線を引く
- 理事会への報告:加算の区分、実績報告の数字、次年度に(I)を目指すかどうかを、年に1回理事会に報告するかどうか
生成AIの利用ルールを法人の規程にするかどうかは、施設の委員会だけでは決められません。進め方は社会福祉法人が生成AIを入れる順番を参考にしてください。訪問介護や通所介護に同じような加算が広がるかどうかの議論は訪問介護とデイにも生産性向上の加算が来るに、障害福祉の処遇改善加算の職場環境等要件にある生産性向上の区分は障害福祉の生産性向上要件A〜Gに書いています。
よくある質問
- 生成AIを導入すれば、生産性向上推進体制加算を算定できますか。
- いいえ。厚生労働省の解説資料で導入が必要とされているテクノロジーは、見守り機器、職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(インカム等)、介護記録作成の効率化に資するICT機器(介護記録ソフト等)の3つの区分で、生成AIを入れれば要件を満たすという書かれ方はしていません。生成AIは、委員会の議事録や実績報告の準備など、加算に伴う事務の手間を減らす道具として考えてください。
- 実績報告はいつまでに、どこから出しますか。
- 事業年度ごとに1回、生産性向上推進体制加算実績報告システムからオンラインで厚生労働省に報告します。京都市の案内では提出期限は各事業年度の末日までとされています。システムにはGビズIDのプライムIDまたはメンバーID、または電子請求受付システム(介護)でログインします。GビズIDのエントリーIDではログインできません。
- 実績報告では、どの期間のデータを出しますか。
- 厚生労働省の解説資料では、総業務時間と超過勤務時間は対象事業年度の10月の介護職員の1月当たりの時間、年次有給休暇は11月から10月までの1年間の取得日数を報告するとされています。算定初年度の総業務時間と超過勤務時間は、算定を開始した月が対象期間です。利用者の満足度等の評価(WHO-5など)の実施時期は任意です。
- 加算(II)から(I)に上げるには何が必要ですか。
- 見守り機器、インカム等、介護記録ソフト等の3つすべての導入、職員間の適切な役割分担の取組に加えて、成果の確認が必要です。厚生労働省の解説資料では、加算(II)で求める介護機器の導入後、生産性向上の取組を3か月以上継続したうえで、導入の前後を比較し、利用者の満足度等、総業務時間と超過勤務時間、年次有給休暇の取得状況で成果を確かめて届け出るとされています。加算(II)を取らずに最初から(I)を算定することも可能です。
- 職員の勤務時間のデータを生成AIに入れて集計してもよいですか。
- 職員個人を特定できる形の勤務時間や休暇の日数、利用者の調査の回答は、入れないことをお勧めします。集計は表計算ソフトで行い、生成AIには氏名を含まない形で、平均の出し方や集計表の作り方、報告の手順書の下書きを頼む使い方にとどめると安全です。法人としてどこまで入れてよいかは、利用ルールで決めておいてください。
まとめ|生成AIは要件ではなく、加算の事務を軽くする道具
生産性向上推進体制加算の要件は、委員会と安全対策、見守り機器などのテクノロジー、ガイドラインに基づく業務改善、年1回の実績報告で、(I)はこれに成果の確認と役割分担が加わります。生成AIは要件ではありません。使いどころは、委員会の記録、アンケートや点検表の様式、研修資料、実績報告の手順書といった、加算に伴う事務の下書きです。
いま決めておくことを1つ選ぶなら、10月の総業務時間と超過勤務時間を誰がどう集計するかです。対象月は10月なので、集計の手順が決まっていれば、報告は年度末に慌てずに済みます。
出典
- 厚生労働省 老健局高齢者支援課 介護業務効率化・生産性向上推進室「令和6年度介護報酬改定 生産性向上推進体制加算について 生産性向上推進体制加算(I)及び(II)の解説」(R8.3更新) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001280909.pdf(単位数と算定要件、委員会で検討する4つの事項、導入が必要なテクノロジー、役割分担、実績報告の項目と対象期間、報告書の様式、成果の確認、よくある質問)
- 京都市「生産性向上推進体制加算にかかる実績データの厚生労働省への報告について」 https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000337907.html(提出期限、報告システム、介護保険最新情報Vol.1315)
- 厚生労働省 生産性向上推進体制加算実績報告システム https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/shinsei/report/(ログインの方法)
- 厚生労働省「介護分野の生産性向上 お知らせ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei-information.html(生産性向上ガイドライン等)
この記事は2026年9月30日時点で公開されている情報に基づいています。加算の要件や報告の方法は、令和9年度の介護報酬改定などで変わることがあります。実際に算定・報告する際は、最新の告示と通知、指定権者の案内でご確認ください。
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最終更新:2026-09-30
